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執務室にて。晴れて蒼黎の君主となった鳳黎命は神楽木透栖と対峙していた。彼の顔にはありありと不満に加えて怒りの感情が浮かび上がっている。
面倒だなと思いつつも、今回は極限まで様々な精神的圧迫に堪え忍んできた彼を蔑ろにするわけにもいかず、書簡を片手に応じる。
「言いたい事でもあるようだな?」
「あるわ!結局、お前が連れて来たあの小娘と女は何なんだ!?何を平然と城内に住まわせている?怪しかろう、明らかに!」
「そう吠えるでないわ。奴等は無害よ。それに、甘音の方は霧氷の気に入りだ。あまりちょっかいを出さぬ方がいい」
「どうでもいいんだよそんな情報はッ!いいから、奴等が何なのかを教えろ。小娘の方は東雲の娘らしいではないか!」
「うむ。奴の名は東雲紫水だ――」
「おい!仇討ちされても知らんぞ!?」
だがな、と黎命は彼女の才能について話す。一応は黙って一通り話を聞いた透栖は憮然と声を荒げた。
「そんなもの有るわけ無いだろう!?何が《千里眼》だっ!貴様はあの子供を戦場へ連れて行く気か!?」
「そうとも。奴の才が本物であるのならば」
「鬼か!」
「だが城内に幽閉しておくわけにもいくまい。使えるものは使わねば。それに、まだ未知の部分もある。俺は大層、紫水に期待しているのだ」
東雲の因果については心配要らないだろう。そもそも紫水は朋来の事を認識していなかったし、彼女にそれ程驚異的な殺人能力があるとも思えない。甘音の方は紫水に仕えているようなものなので、少女が無事である限りは馬鹿な事などしないだろう。
「故に、お前が心配するような事など無い」
「お前のそういう楽観的なところが俺は心配だと何故分からない」
売り言葉に買い言葉だった。