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結果から言えば、霧氷の提示した案は成功だと言えた。
垂らした釣り糸に獲物が掛かったのだから――それも、大きすぎて竿が引けない程の。
「ええい、何だ貴様等!何故!ここにいるッ!!」
喚き散らす人物を見て、透栖はおろか、その一歩前に立つ霧氷ですら茫然とその光景を見ていた。というか、どういう反応が正しいのか分からなかった。
信じたくない――信じたくない現実であるためか、思わずこの場で一番絶句し狼狽して、心底がっかりしているであろう透栖は思わず尋ねた。
「貴様――東雲朋来、か?」
途端、取り乱していた男がこちらを睨み付ける。喚いたり黙ったり、忙しい奴だ。
「いかにも!見ればわかるであろう、そのくらい!」
「・・・色々言いたい事はあるが、覚悟しろ。その首、貰い受ける・・・」
「もっとやる気のある言い方は出来んのか!?」
敵に叱咤された。初めての経験過ぎて咄嗟に言葉が出てこない。
唖然としている透栖に代わり、この衝撃から立ち直ったらしい斎火が一歩、前へ進み出る。
「なんか知んねぇけど、敵の総大将がこんな所うろついてるとはな!まさか霧氷殿の気紛れがこんなところで役立つたぁ思わなかったぜ。ま、そういうわけだから、悪く思うなよ!」
「ちっ・・・あの小娘め。ここに、敵兵は来ないのではなかったのか・・・?」
「あぁ?なんだって?」
「何でもないわ!ふん、まあよい!敵陣のど真ん中に現れるとはな。まさか、この私が一人でいるわけがあるまい!」
何故か胸を張ってそう言った朋来。その傍らからバラバラと敵兵が姿を現す。どうやら伏兵として配置する予定だったが、こちらが先に到着してしまったので結果的には伏兵の意味はあまり無くなってしまったらしい。
――と、霧氷がそれはもう盛大な溜息を吐いた。
「数が多いだけの烏合の衆だったか。しかし、数が多いな・・・」
「構わん。もはや、敵将は追いつめたも同然。我等で畳みかけるぞ」
「透栖。お前はたまに、言う事成す事雑過ぎるきらいがあるな」
「あーあー!言ってる場合かっての!どーしたもんかね、これ。退くにはちょいと有利過ぎるが、真っ向から戦うにはキツい数だね」
そうだな、と同意した霧氷はしかしその鋭い眼光を東雲朋来へと向けた。
「今後の憂いに繋がるかもしれん。今ここで、叩いておくべきが吉だろう。少々――いやかなり、奴らの進軍先には違和感がある」
「――その意見には賛同しておこう」
「どーすっか決まったのかよ。んじゃま、頑張っていくかね!」
先陣として仕事を全うした斎火は少々疲れているように見えたが、それをおくびにも出さず槍を構える。透栖は心中で一応、彼に謝っておいた。