1.





「問答は済んだか?そろそろ本題に入るぞ」
「あー、ちょっと待てよ」

 苛立ったような千石の声に我に返る。久々の大規模な戦に心を躍らせていたが、そういえば策とか何も聞いていなかった。が、その前に南雲ともしても訊かなければならない事がある。
 室内を一度見回し、その問いを口にした。

「雲雀はー・・・いないな」
「ふん。あの人が謀反に荷担するわけがないだろう。少し考えれば分かる事だ」
「お前ホント、俺に毒吐くよなー。えっと、姫様は?雲雀の奴に会いました?」
「会ったよ。雲雀殿の勧誘は私と、六角殿の担当だったからね」

 ――それは可笑しくないか。
 まさか、伊織は気付いていないのだろうか。雲雀を一応とはいえ勧誘したということは、彼に反乱を起こす事を告げたという事。生真面目な奴が誰にも話さず黙っておくとは考えずらい。いやそもそも、そんなヘマを六角が着いていながらするだろうか。

「てめぇ、南雲。今、失礼な事考えてただろ!」
「え!?いや!考えてませんって!六角殿が着いていたんだから、安心だと思ってただけです!」
「ほう・・・?」

 雲雀殿ならね、と伊織が口を挟んだ。上司と部下の押し問答に嫌気が差したらしい事は一目瞭然だった。

「仲間にならなかったから、仕方なく六角殿に手伝って貰って、縄掛けて部屋に幽閉してるよ。誰かに話されたら大変な事になるからね」
「そーいう事よ!お前の軽い頭と一緒にするんじゃねぇ!」

 ――うわっ、かわいそーに・・・。
 手足を縛られてどこぞかの部屋に放り込まれている雲雀を想像して怖気が走った。もし、あの時断っていればああいう末路になっていたわけか。
 あはは、と明るい笑顔を浮かべた伊織があざとい角度で首を傾げた。あまり可愛くない。

「まさか・・・南雲は私達の事、裏切ったりしないよね?」
「ま、まー、乗りかかった船ですからね!喜んでお供しますとも、喜んで!」
「話はまとまったな。南雲。そう言ったからには、馬車馬のように働け。大丈夫だ、やらなければならない事はいくらでもある」

 言質取った、と笑う千石の後ろで上司が「目ぇ離したらすぐサボるからな。キリキリしごいてやってくれ」と笑っていた。