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謀反とは仕えている国や主人に反旗を翻す事を指すのであり、そんな物騒な言葉をまさか国主の娘から聞かされる羽目にはるとはさすがの南雲も思っていなかった。
停止した思考が徐々に働き始める。
――とりあえず、姫様が過激な歳頃だって事は解った。思春期の女の子なんてこんなもんだ多分。
「あー、えっと、姫様?一体それはどういう意図が・・・いや、やっぱいいです。何で俺なんかに声を掛けたんです?」
「南雲って暇そうだから・・・あ!あと、割とノリがいいからかな?」
「姫様姫様、もしかしてさっきから俺に喧嘩売ってます、姫様?」
え、そんな事無いけど何を言ってるの、と首を傾げられる。そんなあどけない顔をされても困るのはしがない下っ端の自分だ。
「あのー、何かありました?お父様と仲が上手くいってないとか?」
「何でも無いよ。いいから、早くはいって答えてよ」
「すでに俺の処遇決まってんじゃないですかー、それ!」
どうやって彼女を躱せばいいのか分からない。というか、目が合う度にその瞳が本気なのだと告げており、伊織を直視出来なかった。
――先見の目を持つ彼女。一体、その瞳にはどんな未来が写っているのだろうか。こうして声を掛けて来たという事は、もしかすると数分後の自分は彼女の思惑に荷担しているのかもしれない。
悪くは無い。謀反、などと言っても所詮は国主の娘だ。親殺しなんてそんな度胸は無いだろう。そんな大事になるとも思えない。
ただ、ただの騒ぎにするだけならば参加は遠慮したかった。ただでさえ武将ではなく文官としての南雲は一色や志摩からの風当たりが強い。何にも引っ掛からなかったらそのネタで数週間はからかわれそうだ。
「んー。伊織姫、ちなみに今は誰が参加しているんですか?」
一応、参加者の面子だけでも訊いておこうと思った。それによっては自分の意見はどうとでも転がるが、一人ぐらい心強い武将か誰かを取り込んでいれば、やる気が出るかもしれない。
話に乗った風に話すからか、パッと伊織の顔が輝く。まだ決めたわけじゃないのだが。
「まずは私、あと千石様――」
「千石ッ!?あの堅物、参戦するんですか!?うわー、何それ超珍しいじゃないですか!」
「私が頼み込んだら、いいって言ってくれたんだ」
「ね!?やっぱり俺が言った通り、千石の奴は姫様にデレデレでしょ?」
「何言ってるの、知ってたよそんな事」
「うわー。それが本当だったら姫様ってば魔性の女じゃないですか!」
「まぁそれはいいから。で、来てくれるんでしょ?」
「当たり前ですよー!すっげぇ面白そうな臭いするし。あの神童が参加してるなら、ただの謀反騒動じゃ終わらないですよね?いやー、こんな楽しそうな事に俺まで参加させていただいて、感謝してますよっ!」
こんな言葉、雲雀の奴が聞いたら卒倒しそうだな。そんな事を思いながらも、仲間と顔合わせって事でどうやら城内に伊織の拠点があるらしいのだがそこへ行く事に。