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「肝心な動機を訊いていないな。差し支えなければ教えろ」
そういえば、何故彼女が「謀反起こす」などと言い出したのかがそもそもの問題だ。ただ何となく、という性格では無いし、何より相手は血を分けた親。どうしてそういう結論へ至ったのか実に興味深い。
一瞬、黙り込んだ伊織はしかし首を横に振った。
「私、気付いたの。自分の意見を押し通す為には人の意見をうんうん、って聞いてるだけじゃ駄目だって。人間ていうのは古今東西、人を従わせるのが大好きな生き物だからね。この国だってみんなが血反吐ぶちまけて手に入れたわけで、この世で大事なものは自己主張だと思うの。横でぼそぼそ意見言ってるだけじゃいけないって。断られるなら、駄目って言われるなら、そう言われない状況にすればいいんだよ。たまには実力行使だって有効な手札って事だよね」
「・・・あ、あぁ」
「だから私は勝つわ。目指すは完全勝利だよ」
「意欲に満ち溢れているようで何よりだ」
拳を握りしめる伊織。
しかし、自国を落とそうとする姫君とはどうしたものか。
「――まずは誰を落としに行こうか」
「六角殿だね。あの人は良い人だから、上手く言いくるめられれば戦力になるよ」
「そうだろうな。南雲はどうする?雲雀殿にも声だけは掛けておくか?」
「南雲は六角殿の後。ただ、うちの陣営に六角殿がいる事を知られたら駄目かもしれない」
「ふむ。という事はある程度の手順が必要だな。準備するぞ」
「意外と乗り気だね」
「こういうのは真剣にやるから面白い。それに、覚悟しておくといい、伊織。もし失敗したら、我等に未来はないぞ」