No.001

3


「うちで怪奇現象?が起こるって話なんだけど・・・」
「それはしってる。そこにいたるまでの経緯がしりたい」
「ああうん、実はちょっとだけ心当たりがあって――」
「録音」

 話の腰を折るように宣言した芽依が小さな機械の電源を入れ、テーブルの上に置いた。成る程、彼女は本当に話を聞くだけらしい。

 2週間前の話だ。何の出来心だったかは思い出せないが、友人4人で屈指の幽霊スポットと呼ばれる廃墟へ足を運んだ。学校帰りだったから午後6時を過ぎていたし、結構暗かったかと思う。
 今思えば非常に冒涜的な所行だったと思う。女子高生4人だ。そりゃギャーギャー騒ぐし、さぞや煩かったのだろう。
 だからか。他の友人達が気付いたのかは分からない。ただ、自分は気付いた。
 ――自分を含む4人。それが、何故か自分から見た視点で4人いた。早い話、この場にいつの間にか5人目の人間が増えていたのだ。誰が増えたのかは分からない。最初から5人で皆知り合いだった気もするし、全く知らない人物が混ざっていたような気もする。
 そこから不気味になったので引き返す事を提案すれば7時近くなっていたので自然と解散する流れになった。独り暮らしなので非常に怖いような気分に駆られながら帰路に着いたのは言うまでも無い。
 けれどそれは間違いだったのだ。この足で寺だか神社だかに行く必要があったのだと思う。きっと着いて来てしまったのだろう。この日を境に、アパートの一室では日々怪奇現象に悩まされる生活が始まった。

「――と、言うわけなんだけど」
「ひぃ・・・」

 あれ、この子信じられないけれど関係者じゃなかったのだろうか。何か可哀相なぐらい怖がって震えているように見える。
 震える少女は隣の青年にピッタリとくっついていた。仲の良い兄妹みたいで大変微笑ましいが、話はちゃんと聞いていたのだろうか。そもそも、紅鳶なる青年は話している間中ずっと菓子を食っていた。大丈夫かここのビル。

「大丈夫大丈夫。ちゃんと俺が聞いてたからさ。いや、うちの主人は人間的な霊の話怖がるんだよなぁ。俺としてはほとんど害が無い分、人間の方が怖くないと思うんだけどな」

 色々突っ込みたい所はあるが、彼が話をちゃんと聞いていたとは到底思えない。その証拠に話した事情に関してほぼ突っ込んで来ない。喧嘩を売っているのか。
 しかし話が終わった事そのものに関してはちゃんと理解しているらしく、少女が放置したままにしていた録音機を切る。それを回収するとそのまま青年はそれを芽依へと渡した。あなたが持っていた方が安全だと思うのだが。