第4話

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 再びスマートフォンの画面に視線を落とす。時刻は13時13分。当然こんな時間ではないはずだ。いまだシートに座ったままだが電車に動く気配は無い。降りろと言わんばかりであるがここから降りてはいけない気がする。
 しかしこうしていても始まらないのは事実。降りるつもりはサラサラないが出入り口へ近付き、見た事も無いようなホームを観察する。当然人影は無い。
 ふつふつと不安のようなものが湧き上がる。今までは運良く自宅へ帰り着けたが、今回もそうであるという確信は無い。どころか、たぶん帰れない可能性の方が高いだろう。今までの運が良かっただけ。自身の運を自在に操れるのなんて、恐らくきっと天乃美琴だけだろう。
 ――とん、そんな軽い衝撃。

「え」

 振り返る暇も無く、踏鞴を踏んでついでにホームへ降り立った。思わぬ所に強い力を加えられ踏ん張る事が出来なかったのだ。
 ガシャン、とギロチンを彷彿させる動きで電車のドアが閉まる。人が立っていたら真っ二つになっていてもおかしくないような遠慮の無さだった。
 慌てて電車のドアに手を伸ばすも、すぐに発進。今までもたもたしていたのは何だったのか。

「ああ・・・」

 遠くなる電車の音と光を涙目で見送る。恐らく唯一元の世界へ戻る為の脱出経路は今を以て絶たれた。あとは烏羽が異変を察知して助けに来てくれる事を祈るのみだが、あの何を考えているのか分からない《うろ》がわざわざ人間である自分を助けようなんて考えに至るのかも不明だ。
 仕方無いのでホームを出る。
 風景そのものは『きさらぎ駅』と似たようなものだった。別に白黒というわけじゃないのに、白と黒しか無いような既視感。そしてそれに、赤色だけが鮮やかだった。白黒、そして赤を足したような世界。不気味の一言に尽きる。
 ホームに帰って来られるくらいの範囲で探索してみよう。
 何か見つかるかもしれないし、恐らくホームにいたって何の進展もない。

「神社?」

 駅からぐるりと周囲を見回すと目に痛い程の赤が飛び込んできた。神社によくある鳥居だ。鮮やかな赤が酷く眩しいが、ここへ来いと誘われているような気さえする。