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天乃美琴の話は自分が辿りうる末路を想定するには随分と的確で、今の状況と似通い過ぎていた。
「えーっと、確かその10年前までは支部は無くて、代わりに《異能者連合協会》担当の何とかっていう役人さんが取り仕切ってたんだよ。ほら、一応協会は国営だからさ。ね?」
「あれ、じゃあお給料とかは・・・?」
「期待して大丈夫!最近は実績も挙げてきたからね!たんまりだよ!まあ、あたし達の命が懸かってるから当然だよね・・・。で、そのお役人さんなんだけど――その人達、実は《異能者》じゃなくて普通の人だったんだよ。で、なーんにも視えない普通の人が指示出してたから、どうしても《うろ》の後手後手に回っちゃってね。しかも派遣制度っていうか、異界が発生しても気づけないから、人が死んでからようやく《うろ》の仕業だって・・・感じで・・・」
それは地獄絵図だ。例えばあの学校事件。本部がどこにあるのか知らないが、もし本部から派遣された《異能者》が生徒を救出、という筋書きだったら確実に全滅していた。否、駆け付けた《異能者》もただでは済まない。何せ、駆け付けた頃には《うろ》は異界無しで完全に顕現を果たしていたっておかしくないのだから。
つまり、10年前の協会は――ほぼ、機能していなかった。それが答えであり、真理である。そしてそこから起きる『いざこざ』を連想出来ないわけでもない。
「そしたらさ、《うろ》に返り討ちにされたりして《異能者》がどんどん減っちゃって。で、そこで生まれたのが強制的に能力を開花、開発させた純粋培養って呼ばれる英才教育を受けた人達なんだ。華天さんとかがそうかな。
今は12個支部があるんだけど――まあ、中には世代交代しちゃった支部もあるとして、それでも色々改革の結果、今の支部長さん達が各地に支部を置く事で迅速な対応が出来るようにしたってわけ。まあ、簡単に説明してるけどかなり大変だったみたい?」
「じゃあ、今、私に任務を送って来るのは――」
「それは別、支部じゃないよ。支部がやるのはあくまで各地の守護だから・・・。華天さんのアドレス以外から来るメールは全部支部のお上様だね!」
組織の闇は深い。それがなんであれ、どこであれ。恐らくは自然発生する《うろ》なんかより人の方がよっぽど怖い。
だって――今受けているこの『きさらぎ駅』調査任務だって何かを失敗すれば二度とは帰って来られない危険性を十二分に孕んでいるのだ。
「・・・学校、行こうか」
「大丈夫?とりあえず1限だけ出て早退した方が良いよ、顔色悪いし!」