第4話

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 さすがに無視するわけにもいかず、友達に断りを入れて席を立つ。話が長引くと次の授業に出られないかもしれないので、一応は「少し気分が悪いから保健室へ行く」、と言っておいた。
 とにかく、彼の姿は基本的に見えないのだ。何食わぬ顔で烏羽を追い越し、人目の着かない半地下の階へ。物置と化しているそこには異様な雰囲気が漂っていて、通常時は誰も近付かないのだ。

「――それで、どうかしたの?」
「暇だった」

 眉間に皺が寄る。いやいや、来るなつっただろ。
 深い深い溜息を吐きながら皺を親指でグリグリと伸ばした。さて、どうやってこのアホにお帰り願おう。

「何やら面白い事を調べているらしいな?」
「え?」
「幸運娘から聞いたぞ」

 ニヤニヤと嗤う烏羽。面白い話を嗅ぎ付けてわざわざ学校まで来たらしい。移動手段とか諸々聞きたい事はあるが敢えて気付かないふりをする。そう、奴は学校事件でハブられたのをまだ根に持っているのだ。
 黙っていても仕方無いし、少し情報を開示するだけでお帰り頂けるのであればそれにこしたことはない。神無は渋々とその口を開いた。

「次の仕事、『きさらぎ駅』の調査だから。ちなみに烏羽は連れて行けないよ」
「この俺を前にして『連れていけない』などと身の程知らずな事を言えたのは素直に認めてやろう」
「はぁ・・・どうも」

 彼、たまに思うが傲慢が過ぎないだろうか。淡藤は戦闘向きじゃない、と言っていたので烏羽を畏れるのに合点がいくが他は彼を持ち上げ過ぎである。調子に乗るから止めて欲しい、切実に。

「ふむ、『きさらぎ駅』か。きさらぎ、という地名ならば覚えがあるぞ」
「へぇ?」
「俺はその隣に居を構えていてな。まあ、『きさらぎ』についてはよく知らん。にしても、人の探求欲というのは尽きんものだ。藪蛇という言葉も知らないのか」
「どうして?たんに噂、なんだけど」
「嘘から出た誠。こちら側もあちら側も、言葉にしてはいけない言葉がある」

 難しくてよく分からないがともかく烏羽自身は非常に愉しそうだ。何か企んでいるようでもある。何でもいいが、こちらとしても仕事は早く終わらせてしまいたいので邪魔だけはしないで欲しい。