第3話

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「そういえば結局あの覗いてた女の子は何だったんだろう」
「怪異じゃない?隙間少女とかいう、最近学校で流行ってるやつ!」

 何だそのピンポイントな怪談は。胡乱げな目で天乃を見れば彼女は意気揚々と事の次第を語った。

「そのままの意味なんだけど、ずーっと女の子が着いて来るって話。隙間から覗いてるんだってさ。出没時刻は夕暮れだよ!」
「まだ朝だったんだけどそれは・・・」
「異界だからね!仕方無いね!」

 少女は怪異だった。では、黒スーツ、初老の男性は何だったのか。人間かとも思ったが冷静な頭で考えてみるとあんな所に人間がいるはずもない。何より怯えている様子では無く、神無を見て驚いた顔をしていた気がする。

「うーん、黒スーツは聞いた事無いなぁ。何だったんだろ・・・烏羽は?何も見ていないの?」
「見ていないな。というか、あの異界には俺達と常盤以外いなかったと思うが」
「信憑性は烏羽の方が高いかなぁ。神無ちゃんがちょっと疲れていたって可能性もあるし・・・」
「いたのは本当。幻覚とかじゃない」

 黒スーツについては保留となった。誰も答えが分からないのでは仕方が無い。

「神無ちゃん、異界をちょっと引き寄せやすいみたいだよね。『きさらぎ駅』もそうだけど、学校の件も今回の件も異界ばっかりだし。気を付けた方が良いよ」
「気を付けて・・・回避出来る、なら・・・それは・・・異界じゃ、ない。この人間は・・・良物件。異界を、立ち上げる時に・・・目に付きそうな、何かが・・・あると、思う」
「そうなの・・・?」
「言っただろう?貴様にはそういった類の異能があると」

 出任せではなかった。あの、烏羽の助言めいた言葉は。彼だけがそう主張するのならからかっているだけだ、と受け流せたが淡藤はそうじゃない。何より天乃の心配そうな顔が事態の深刻さを物語っているようだ。

「えーと、じゃあ神無ちゃんは取り敢えず報告しておいてね。あとは家へ帰ってゆっくり休んだ方が良いよ!」
「そうする。行こうか烏羽・・・烏羽?」

 どこか上の空な相棒の背中を叩く。我に返った烏羽は何事も無かったかのように踵を返した。手を振る天乃の姿が見えなくなったところで、どうしたのか尋ねてみる。

「いや、黒スーツの男について考えていた」
「あれは私の幻覚って事で決着したんじゃないの?」
「皮肉にしては自虐が過ぎるな。・・・思いつくのがいるが・・・たぶん違うな」
「煮え切らないね」
「いや、奴だったのならスーツとやらを着ていておかしくはないと思ったのだが、気配を殺すのが得意とは言えない奴だ。ならば違うだろうよ」

 だったらそれは誰なんだ、どうやらそういう事らしい。