第3話

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 今までの出来事を天乃美琴と淡藤に話して聞かせたところ、返ってきたのは意外な答えだった。

「ああ、あの逃がした片割れの《うろ》は常盤って名前だったんだね!本当はあたし達がそいつの事を追ってたんだけど・・・いやまさか、先に神無ちゃんが狙われるのは《協会》側も思ってなかったんだろうね!」
「それで襲われたらどうしようもないんだけど」
「華天さんが、最近色々あったし神無ちゃんにはちょっと休んでいて貰った方が良いって言うから言わないでおいたんだよ・・・うん、裏目だね!」

 天乃達もまた逃がした《うろ》を追い掛けていたそうだ。というのも、青朽葉が名前の通り銘有りだったのでその相棒もまた銘有りだろうと、さっさと始末してしまいたかったらしい。また顕現しようとして大量殺人なんてされたら堪ったもんじゃない、と――

「あれ?もう常盤は人の姿をしていたけれど・・・」
「それはあたしも気になってるんだよね。ちなみに、支部にも《協会》にもそれらしい事件報告は来てないよ。その辺どう思う、淡藤?」

 首を傾げた淡藤はしかし、人間側と同じ見解を示した。

「分からない・・・でも、もし・・・顕現したのなら・・・人喰い以外の方法で、霊力を・・・溜め込んでいた、のかも」
「殺人をしようと誰も気付かない、上手い奴だった可能性も捨てきれんな。まあ、そうは見えなかったが」
「現界する、時の・・・霊力必要量、は・・・みんな違うから・・・低コストだったのかも・・・」
「見た所、その辺りも普通だったな」

 そういえば、淡藤や烏羽はどうなのだろう。彼等も低コスト高コストあるのだろうか。それとなく尋ねてみれば天乃の相棒は首を横に振った。

「低燃費・・・美琴の少ない霊力でも、顕現は・・・可能」
「だよね!一緒にお買い物行ける時点であたしの力だけで顕現してるもんね!」
「買い物・・・好き。楽しい・・・」
「あたしも淡藤で着せ替え人形するの好きだよ!」

 微笑ましい。ただの仲が良い友達同士にしか見えない。そっと烏羽の横顔を覗いてみると目が合った。こっそりした意味など無である。

「貴様のような言い方をするのなら高コストだろうな。俺が顕現しようとしたのなら、異能を持った人間が二桁いても足りん。つまりお前程度の霊力では俺の腹をも満たす事は出来んだろうよ」
「えっ、そうなんだ・・・。じゃあ学校の生徒全員分くらいないと駄目?」
「足りんな。というか、その生徒とやらはただの人間ではないか」
「・・・震災レベルだよそれ!」
「俺とてそんな面倒はしたくないがな」

 それでいいと思う、と言ったのは淡藤だった。彼女は話す時、決して烏羽と目線を合わせない。それに気付いたのは最近だが、やはり今日も淡藤は烏羽の足下を見てボソボソと呟く。

「とても、強いから・・・こっち側には、いない方が、いい・・・」
「ほう、言うな。が、そも俺も顕現しようとは思っていないが。面倒な上、大量殺戮などしてみろ。貴様等人間が従えている同胞からの集中砲火だ。面倒どころの話ではない」

 多少なりとも《協会》の存在は《うろ》への抑止力になっているらしい。安心するような、それでもなお湧き出て来る異形達に恐れ戦くべきか。