第3話

1-3


 ――出ない。出る気配が無いし、そもそも外界へ繋がるように出来ているのだろうか。
 もし電話が鳴るだけで繋がっていないのならば今の状況は本当にまずい。何せ、ここには変な意地を張ったせいで自分一人しかいないのだから。

「駄目か・・・ううん・・・」

 他に誰か電話の出来るような、有用な人物はいないだろうか。画面に視線を落として愕然とした。
 電話する前は100%の充電だったそれはしかし、今や75%と表記されている。まさか、電話をしただけでそんなに充電が減るだろうか。いや減らない。やはり、特殊な空間か。
 ――何人にも電話は掛けられない。
 となると、もう掛ける先は決まったも同然だった。家である。
 烏羽がいるはずだし、世話焼き――ではなく、弱者に頼られるのが好きらしいのでお願いすれば来てくれるかもしれない。あの様子だと割と退屈しているようだったし。気は乗らないが命には替えられないだろう。
 再びスマートフォンを耳に押し当てる。
 着信音が1回、2回、3回――9を数えたところで切った。あれ、家から出ているのだろうか。繋がらない。それともやはり、この空間は電話が通じない造りになっているのだろうか。
 パタパタ。軽い足音。例えるならそう、幼稚園に通っているような子供が立てるような無邪気さを孕んだ足音だ。
 人がいるのか、と振り返る。
 しかしそこには無機質な道路が広がるのみで、人影らしきものはなかった。気を張り詰めていたせいだろうか、幻聴を聞いただけかもしれない――

「ヒッ・・・!?」

 目を凝らした所でそういえば先程とは違うような光景に気付いた。否、気付いてしまった。変な詮索をせず、ひたすら道路を歩く作業に戻ればよかったのに。何故。
 電柱から覗く少女の顔。顔より大きいはずの胴体は何故か見えない。顔を半分だけ覗かせたそれは圧倒的に無表情だった。
 小さく悲鳴を上げ駆け出す。もうこの道がどこに通じているのかなどどうでも良かった。ただ、全身を支配する恐怖の命じるままに走る走る走る。《うろ》と相対した時には感じなかった別種の恐怖が吐き気すら呼び起こし始めたところで足を止めた。
 ――相変わらず背中に痛い程の視線を感じる。