第2話

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 それでこれからどうするのか、と比叡に聞いてみる。が、彼はあっけらかんとこう答えた。

「逃げるッスね。これ、もうオレ達じゃどうしようもない事件ッス!ここは完全に人間の狩り場になってるし、例えるなら今のオレ達は極上のフカヒレスープッス!ンなもん喰わせたら《うろ》更に強くなっちゃうし、逃げるが吉ッスね!」
「天乃さんは・・・」
「美琴先輩も逃げる準備に入ってると思うけど・・・。ま、あの人は運良いから大丈夫ッスよ!細かい事は気にしない方が良いッス!」
「助けは来るの?外との連絡手段――あ。そういえばスマフォあるんだった」

 授業が始まるので直前で電源を落としたが、付ければ家とかに電話出来るんじゃないだろうか。もたもたと電源を入れる。
 電源が入るまで少し待たなければならないので、再び取り出したスマートフォンを制服のポケットに入れた。何やら黄丹と会話している比叡に問い掛ける。そういえば、彼等も契約適性のあれこれなんだろうか。

「今から何をすればいいの?外にも出られないんだよね、これ」
「んー、救援が来るまでとにかく逃げるッス。他の生徒には悪いけど、オレ達の安全が優先ッスね。ここまでなっちゃうと」
「ふうん・・・。身体を張って助けろ、とか言い出すのかと思ってたよ」
「3支部の連中ならそうなってたと思うッスよ。あそこの人達、根っからの《協会》主義だし。でもオレ達のところは中途異能の方が圧倒的に多いから・・・」

 成る程、4支部と言うから他に支部があるのは明白だったがその支部によって毛色が違うようだ。ここが緩いのか厳しいのかは分からないが、自分のような人間は3支部に配属されなくて良かったと言うべきだろう。
 そういえば、今頃烏羽は家でどうしているのだろうか。そもそも2日目以来、彼が学校で暇を潰していた事は無いが今も呑気にリビングで昼ドラでも観ているのだろうか。

「あーっと、比叡くん。もしよければ、烏羽を呼ぼうか?たぶん、私みたいな非力な人間よりアイツがいた方が安全だと思うんだけど・・・」
「やめときな、嬢ちゃん」

 即座に黄丹から止められた。へらへらとした笑みも消え、割と真剣な表情をしている。思わず口を閉ざせばバツの悪そうな顔をした彼は頭を掻き、明後日の方向を見ながら何故か弁解してくる。

「あー、この異界が誰のモンか分かねぇだろ?もうこれ以上、ここに《うろ》を増やさない方がいいぜ。あとそれに、『烏羽』の名前は強すぎるだろ。下手したら俺が殺されちまう」
「そ、そう・・・。なら呼ばないし、そもそも呼ぶ手段無いけど・・・」

 淡藤とは共存出来ていたから、黄丹とは無理だとは思えないのだが。しかし、そっち側の住人である彼が言うのだからそういう一面も持っているのかもしれない。

「うわっ、もう話は終わったッスか!?来てるッス、《うろ》が!」
「迎撃すっか?雑魚じゃねぇか」
「いや止めとくッス・・・。戦ったら場所割れるし」
「だよなぁ、ああクソ、こんな雑魚に背を向ける日が来るとは・・・」

 ほら行くぞ嬢ちゃん、と黄丹が溌剌とした笑みを浮かべながら背中を叩く。地味にどころか普通に痛かった。