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ぎょっとして固まる。先程の人の形をしつつある《うろ》と出会したと思ったのだ。しかし、そんな一瞬の恐怖はすぐ塗り替えられる事なる。
「ひ、人だ・・・!」
「お、おう・・・人ッスけど・・・」
生徒だった。しかも名札の色からして一つ下の学年だろう。
男子生徒は驚いた顔をしたものの、「初めまして」、と親しげにそう言った。いやそれもいいが、初めましてしている場合では無いしかなり肝が据わっている反応としか思えない。
「言さんと美琴先輩から聞いてるッスよ。新しい仲間ッスよね、神無先輩」
「あっ、え・・・うん?」
「俺も《協会》の一員ッス!学年違うからなかなか会わなかったけど!」
――そうか、彼が天乃の言っていたもう一人のメンバーか。よりによって役に立たない自分と先に合流を果たす事になるとは。
そんな彼の背後から、彼より頭2つ以上は確実に高い大柄な男が現れた。
「おうおう、何呑気にお喋りしてんだぁ?」
逆立つ金の髪に赤い瞳と褐色の肌。何故か上半身は何も着ていない。何だこの露出狂、と不躾に眺めていれば男子生徒はこう言った。
「新しいメンバーッス。何でこんなとこにいるのかは知らないけど・・・」
「へぇ・・・よぉ、人間。俺は黄丹!ちょっと出稼ぎでこっち着てんだ」
「それは言わなくていいッス。あ、オレは比叡泰虎!虎ちゃんって呼んでくれていいッスよ!」
「・・・比叡くんは今何が起こってるのか分かるの?」
さすがに初対面の相手に虎ちゃんはあり得ないと思ったので聞こえなかった事にして話を進める。一方で比叡泰虎も細かい事は気にしないタチなのか、特にその件について言及すること無く質問の答えを的確にした。
「オレもよく分かんねぇッスけど、どうも異界と接続しちゃってるみたいッスね。んで、こんなアホみたいな事が出来るのは銘有りの《うろ》だけで、しかもそれが少なくても2体以上はいる状態ッス!」
「それって大変な事なの?」
「一般生徒にまで《うろ》が襲い掛かるっていう4支部史上最強にヤバイ案件ッスね!いやぁ、学校があっさりオトされるとは思わなかったッス」
「だよなぁ。でもま、噂好きのジョシコーセーなら磁場発生しやすかったんじゃね?」
曰く、人が多く集まる所で磁場、或いは異界を発生させるのは困難であるという事。しかし、怪談話だとかそういった類の噂話が大好きな年齢層である高校生。その噂好きの部分に付け込まれた故に今の状態らしい。
黄丹がへらりと緊張感の無い笑みを浮かべる。
「いやぁ、度胸あるよな。こんな所で異界創ろうと思うとか俺ならねぇわ!失敗した後が大変すぎるぜ」