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それから約30分後。
今では2人と2体で仲良く電車に揺られている。当然、淡藤も烏羽も人の目には写っていないらしい。彼等が腰掛けている場所は空白なのに誰も座ろうとはしない。バスなんかで、混んでいるのに不自然に一個だけ席が空いているような、そんな状態。
しかしあれだ。不可抗力とは言え、淡藤と烏羽が並んで座っているとお父さんと娘にしか見えなくて失笑する。淡藤に対して失礼過ぎる。
「よーし、じゃあ今のうちに任務内容の確認をしようか。神無ちゃん」
「ああ、うん。結構緊張してるから・・・」
「えっと、それは何の念押しかな?今日の任務は下級《うろ》の討伐だよ。下級、って言ったら名前も何も無い有象無象みたいなやつだから、烏羽さえ乗り気ならまったく苦労はしないと思うな」
「乗り、気・・・どうかな。今は乗り気だけど10分もしたら気が変わるかもしれないね。乙女と秋空なみに色々心変わりする人みたいだし」
「だよねぇ。ちょっとあの《うろ》、戦闘狂っぽいところあるからこんな雑魚処理させるより強い排除対象当てた方が良いと思うよ。私もね。・・・え?そうじゃないって」
強い相手の時にやる気が無かったら確実に自分が死ぬ。それを踏まえた上で強い対象と戦いたい、とはさすがに言えなかった。そんなに体育会系思考じゃない。
「ああ、あとね。淡藤は戦闘に向かないから・・・まあその、気を付けてね」
「気を付けるのはあなたなんじゃないの?」
「うーん、私は撤退するけどさすがに淡藤に人間2人を逃がす程の力は無いかなって」
――見捨てる気満々か。
責める事は出来ない。が、もっとオブラートに包んだ言い方は出来なかったものか。陰鬱な気分が増し増しである。ただでさえ先の見えない不安に胃痛が絶えないというのに。
「あ。着いたね。少し歩くよ、降りようか。そうそう!こういう電車賃とかって経費で落ちるから後で報告するんだよ!」
「な、生々しいね・・・。うん、そうだよ。だって仕事だしね・・・」
「ちゃんと任務やってると交通費ってバカにならないから!助かってるよ、本当にね」
小声で《うろ》達に降りると伝える。烏羽は起きていたのですでに後に続いていたが、眠っていた淡藤は声を掛けてようやく目を醒ました。いや、隣に座ってるんだから声掛けて起こしてあげようよ烏羽さん。
ジトッとした目で睨め付ければ相棒は「何か文句でもあるのか」、と意地の悪い笑みを浮かべた。
「こっちだよ。えーっと、改札を出て・・・うーん、地図が読みにくいなあ」
「水辺なら、こっち・・・。目的地は・・・?本当、美琴は地図が、読めない・・・なあ・・・」
「そうそう、川に行きたいんだよ川に!」
チッ、とやはり舌打ちした烏羽が先頭切って歩き出す。意気揚々と歩を進めているところ悪いが、行き先は分かっているのだろうか。
「分かっている。川へ出たいんだろう?グズグズするなノロマ共」
地図と睨めっこしていた天乃達が弾かれたようにその後に続く。遠足じゃないんだから、もっと危機感を持ってくれないかな。本当。