第1話

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 それで、と不自然でありながら自然に話題を変える天乃美琴。彼女にとって別支部の人間が行方不明になろうとあまり関係無いらしい。それに2年も前の出来事だ。

「これからについてなんだけど・・・当面は協会から送られてくる任務をこなして過ごしてね。まあ、最初は多分誰か一緒だろうけれど」
「その任務って具体的には何を・・・?」
「《うろ》退治とか怪異潰しとかかな。ほら、よく学校で噂になってる怪談とかあるじゃん?あれが肥大化して《うろ》の住処になる前にちょちょ〜っと細工してただの噂に戻す作業だよ」

 そして、と天乃は神無を指さす。行儀が悪いのだが注意する気にはなれなかった。そういった精神的余裕が無かったからかもしれない。

「神無ちゃんには契約適性のSが付いてるって華天さんが言ってたよ。凄いね!異能複数持ちってザラにいるけどS付いた人は初めて会ったかも!」
「もういっそあなたに譲ってしまいたいのだけど」
「えー、いやいいよ!ちなみに私は適性Bと幸運体質持ちだよ。テストのヤマ、外した事無いんだ!」

 ――それは便利な能力だ。範囲を全て勉強し、しかし取りこぼしがあった時の絶望感を味合わずに済むなんて。

「あとね、言いにくいんだけど一時は実家に帰らない方が良いと思うんだ。言さんが電話で長期ホームステイなんて言ってたけど、やっぱり家に帰ると一般人の家族を巻き込むからね」
「・・・そうなんだ」

 それはつまり、今後普通の生活を送る事はまず不可能という事なのだろう。高校生にして特殊な生活を送る羽目になるとは。予想外すぎて碌なコメントが出て来ない。

「よ〜し、じゃあ次は貰った書類を一緒に見ようか」

 分かった、と応じ封筒を開ける。A4用紙のそれは3枚入っているだけだった。
 ――コンコン、ふと控え目なノックの音が鼓膜を叩く。間髪を入れず、リビングへ通じるドアが開いた。

「あれー・・・?琴美以外の人間がいる−・・・」

 表れたのは自分達と同じくらいの歳に見える少女だった。白っぽい短髪。眠そうに細められた双眸からは覇気が感じられない。例えるならそう、日溜まりで微睡む猫のような。

「淡藤!こちら、お客さんの神無ちゃんだよ!」

 嬉々とした態度で応じる天乃。のろのろと少女――淡藤の頭が動き、ぼんやりした瞳と目が合う。瞬間、違和感を覚えた。何かが決定的に違うような、言い知れない何か。淡藤は軽く首を傾げるとこう宣った。

「ハロー・・・ハロー・・・どう?似てるでしょ・・・美琴に・・・」

 ――超仲良しそう。