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 ふと、その『相棒』と目が合った。途端見る者が嫌悪し嫌煙してしまうような邪悪な笑みを浮かべる。内心で震え上がっていると烏羽はこちらの様子など意に介した風もなく言葉を紡いだ。

「小娘。貴様に飽きたら俺は還らせてもらう。いいな?」
「え?いや、その・・・」

 帰りたければ勝手に帰ればいいのでは、と言いたいが言えない。八つ裂きにされそうだ。
 こら、と須賀が顔をしかめる。

「主人に対して口の利き方がなっていない」
「年長者に対しての礼儀がなっていないぞ、小娘共」

 恐い顔だ、双方共に。やはり数秒睨み合った須賀と烏羽だったが、どちらからともなく視線を外す。もうこれは挨拶みたいなものなのかもしれない。

「さぁさ、行こうか神無ちゃん!割と新しい感じのマンションだからきっと気に入ると思うよ!」
「気に入る気に入らないの問題じゃないのでは・・・」

 いやに乗り気の天乃に背を押されロビーが遠ざかって行く。その場から動こうとしない烏羽は一つ鼻を鳴らした。

「人間臭いな。俺は暫し姿を消す。が、貴様のすぐ隣にいると思え、口は謹んでおくことだな。小娘」

 宣言通り烏羽の姿が一度揺らめいたかと思えばそこには無人のロビーという光景が広がっている。数度瞬きするも意味が分からない。
 車のキーを取り出した夜宮言が愉快そうに喉を鳴らした。

「ああやって《うろ》は姿を消せるのですよ。人目に晒されるのを良しとしない方もいますからね」
「先生は・・・」
「私には使い魔なんて洒落た者はいませんよ」
「神無ちゃん神無ちゃん、私のところにも今はいないんだよ!家に置いて来たからね!!」

 一つ溜息を吐く。賑やかな道中になりそうだが今日は色々あり過ぎて疲れた。もういいから静かにしていて欲しい。