02.
久しぶりのギルド裏で、地図帳を開く。最近は色々な場所へ行ったせいか、付箋の数は増えるばかりだ。もう長らく行っていない場所もあるし、また今度行ってみてもいいだろう。
「ページ、行き過ぎてるけど」
「え?どこ?」
「2ページ前。君、目は節穴かい?」
うるさいないちいち、と憎まれ口を叩きつつページを戻る。森の国はかなり大きな国だった。と言っても大きな国土に反し、人が住んでいるのは恐らく少しだ。森林に囲まれた地図の中、開けた場所だけが人の住む地。
――これ、大丈夫かな。
ルナティア森林の場所を確認し、ギフトを発動させる。場所はこの村らしい部分。森が深いので出来るだけ近く、人気が無い地点を指定。ぐにゃりと視界が歪んだ。
***
「あれ!?」
着いたのは人気のない公道だった。目の前には木々が燦然とならぶ森林が広がっている。つまり、ここはルナティア森林にある村ではない。
「――何、失敗した訳?」
イザークさんが目を細めながら問う。私にとっては失敗したつもりなど微塵も無く、いつも通りにギフトを使用した。失敗したとすれば何か別の要因があるという事だ。
「ごめん、もう一回やってみる。何でここに……村に人が溢れ返ってる、とか?」
少し恐いとは思ったものの、条件から「人気のない場所」を削除する。一番消してはいけない部分のような気もするが、こんなどこか分からない場所から村まで歩くという選択肢は無かった。
二度目、再び視界が歪む――
「あれっ!?お、おかしいな……」
「ふざけてるの?ちょっと浮かれ過ぎなんじゃない?」
ぴきっ、とイザークさんの顔が引き攣る。私は慌てながら何度もギフトを使用しようとしたが、最早発動すらしなかった。
「イザークさーん、何かギフトが使えない……」
「また?じゃあどうするのさ、帰る?」
「うーん、村まで辿り着けないのなら、帰るしかないかなあ……」
「一応、ここはルナティア森林ではあるみたいだね。順路、書いてあるし」
イザークさんが指さした先には雑な手書きの矢印が書いてある、木の札が掛けられていた。立っている木に釘を打ち付け、そこにヒモを通した板を下げているのだ。
「……仕事だからね。行くしかないよね」
「僕のギフトも使えないみたいだ。似たような事、前にもあったね」
「あったよ。えー、何でだろ」
項垂れながらもしかし、果敢に山道を進む気満々のイザークさんの後に続いた。ああ、行きたくない。