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011.

(仙波/芳垣)

「仙波先輩?それ何すか?シャボン玉の液っすか?」
「これは洗濯のりよ。こんな大量のシャボン液持って来てどうしろっていうのよ・・・」
「えー、何で洗濯のり?何か洗うんすか?」
「いいえ。的を張るのに使うのよ」
「的?」
「弓道の白黒的あるでしょ。あれ」
「・・・洗濯のりでのり付けするんすか?」
「これで張ると中った時に良い音がするのよ。というか、洗濯のり使わずに張る方法なんて知らないけれどね」
「ちょっと意味が分からないっす・・・」
「芳垣くんはサッカー部なんだから知らなくたって問題無いわ」


012.

(須藤/上鶴/兼山)

「おや、良い物持っているね兼山さん」
「レモンの蜂蜜漬け?あれ結構好きやっけんね。俺にも1個ちょうだい」
「・・・あのぉ、まだ何も言ってないんで前口上だけ言わせて貰って良いですか」
「よかけど、ここ陸部やけんあまり用がなかったら寄って来たら駄目さ。スパイクのせいで足が穴だけになるかもしれんしね」
「だから!いいから聞いてくださいって!」
「あはは、ごめんね。それでどうしたのかな?」
「家研部の差し入れです!各部活に1パック!!使った後のタッパは部室前に設置したゴミ箱に入れておいてください!以上です!!」
「ああ、もうそんな時期なんだね。毎年ありがとう、って部長さんに伝えておいてくれるかな」
「おー、蜂蜜美味かねえ。レモンは酸っぱか・・・」
「・・・須藤先輩。陸部の部長さんはどうしたんですか」
「え?聡なら外周してるよ。大丈夫だって、ちゃんと伝えておくからさ」
「何で部長が外周なんてしてるんですかっ!」


013.

(芳垣/兼山/葉木)

「うわっ、何か手にペタった!」
「はぁ?あんた何言ってんの?いきなり新しい動詞生み出さないでくれる?」
「お前これ、醤油溢れてんじゃね?うえー、ベタベタする・・・」
「あんたが開ける時に握りしめたせいじゃないの?タレ瓶そんなに握りしめたら中身飛び出すに決まってんじゃない」
「ペタる、ペタった、ペタりそう・・・活用形、みたいな」
「「何言ってんですか先輩」」


014.

(鈴島/小住/葉木)

「何をそんなに悩んでんねん、壱花」
「次の体育さぁ、バレーじゃん?しかも何故か男女混合のやつ」
「ああ、せやね。で、それがどうしたん」
「前回も前々回も顔面レシーブしちゃって、これ今回も絶対やらかすよねって思ったらやる気がどんどん失せてきちゃうんだよね」
「え〜、それは嫌だねー。鼻が潰れちゃうよ〜。あ!そだ、俺がいっちゃんは保健室行ったって言っておくよ〜!うんうん、それがいいって!」
「あかんやろ、前の時間元気に昼寝しとったやん壱花は。小住が代わりに顔面で受ければええねん。解決や解決」
「マジかぁ。悪いね貴夫ちゃん」
「え〜、もうそれで決定した感じなのー?ひっでー」
「「「あはははは」」」
「にしてもあれやんな。あたし等の会話ゆっるいなあ・・・」


015.

(雄崎/小住)

「・・・貴夫。お前が時間にルーズなのは今に始まった事じゃないが、さすがに朝練の遅刻週に5回はまずい。よって、来週から遅刻3回目でペナルティを課すことにした」
「え〜!?唐突且つ迷惑ぅ・・・考えなおしてよ〜、恭平」
「ちなみにペナルティの内容だが、その日1日、1年生の筋トレの面倒を見る事で決着した」
「それ超面倒なやつじゃーん!誰だよ〜、そんなクソみたいなペナルティ考えた奴ー!」
「あー、それは本人の名誉の為にも言えない」
「当ててやろうか〜。レギュラー内にいるでしょー、絶対!」
「う・・・ん、いや・・・それは・・・」
「もう分かったー!絶対千彰だ〜!くっそー、直談判してくるぞ〜!」
「ああ・・・すまん、千彰・・・!」


016.

(仙波/兼山/芳垣)

「はい、ここにシュークリームが11個あります!」
「はぁ・・・?お前いきなり何くだらない事やってんだよ。それ絶対ロシアンルーレットだろ!!」
「まさか、全部同じ味だよ人聞きの悪い!」
「そうなの?じゃあ私も後で貰うわ。今ちょっと手が汚れているのよ」
「マジすか、仙波先輩!じゃあ俺取り敢えず1個いただき――ゴフッ!?」
「芳垣くん・・・?ちょっと、由衣。彼の顔真っ赤だけれど。というか、何だかちょっと泣いてない?本当にルーレットじゃないのよね」
「はい!ルーレットじゃなくて、中身全部わさびです!ぜーんぶわさびシューでした!」
「命拾いしたのね、私」
「く、狂ってやがる・・・!!」
「いや、私が作ったんじゃなくて、瀬戸先輩が・・・」
「さすが電波四天王の一角・・・!葉木先輩よりどうかしたらアレだもんなぁ・・・」
「じゃ、珠代先輩!私、次は壱花先輩に持って行ってきますね!」


017.

(上鶴/葉木)

「ねぇ、私の部屋で食べ物食べるの止めてよ!お腹減るでしょ!何食べてるの!?」
「これはヨーグルトの蜂蜜掛けさね。美味しかよ、葉木ちゃんも食べるね?」
「ええ?その組み合わせ美味しいの?」
「やけん、食べてみんねっち」
「い、いいよ。スプーンなんて持ってないし!」
「はぁー、葉木ちゃんは変な所気にするよね。言われるまですっかり忘れとった。ああ、洗って来ようか、スプーン」
「・・・うん。凄く嬉しい申し出なんだけどね?論点ズレてきてるから。私の部屋で、食べ物は禁止!飲み物は可!」
「そこは飲食禁止じゃなかとね」
「飲み物飲めなくて脱水症とか起こしたらどうするの」
「葉木ちゃんは優しくてゆるゆるな頭ばしとる」
「さっきから喧嘩を売っているのか」


018.

(小住/芳垣/雄崎)

「ふんふふ〜ん♪」
「あの・・・あの、貴夫先輩?」
「ふふふふ〜ん、ふんふふふ〜ん♪」
「どうした、光」
「いや、恭平先輩じゃなくて貴夫先輩・・・」
「ああ、確かにあの鼻歌、妙に耳に付くな。忘れられなくなりそうだし、今も頭の中で無限ループしている・・・」
「そうなんすよね。俺なんて昨日からずっと、ループしてて心なしか寝不足なんすよ・・・」
「そんなことないよ〜。これはー、いっちゃん直伝の魔除けの鼻歌なんだよ〜」
「いっちゃん?カノジョでも作ったのか、貴夫」
「違うよ〜。クラスメイトの壱花ちゃんの事だって!」
「うわ、マジすか。俺なんか最近、四天王に恨まれるような事でもしたかな・・・この間もわさびシュー食わされたし・・・あれは兼山だったけど・・・」


019.

(仙波/須藤)

「本当に何だったのかしら」
「どうかしたのかな、仙波さん。機嫌が悪いみたいだね」
「ああ、もうあなたでもいいから話を聞いてくれる?」
「いいよ。どうかしたのかな?」
「私達弓道部は昨日、近くの弓道場で大会があったのよ。勿論、午前と午後は跨ぐくらいの規模だったから、私は近くのコンビニへおにぎりを買いに行ったわ」
「おにぎりだけで足りるのかい?ちゃんと食べないと駄目だよ、運動しているのに」
「袴の帯でお腹を圧迫していると食べる気が失せるのよ。それに、陸部みたいに動き回ったりしないから心配は無用よ。で、ちょうど道路の脇を歩いていたら観光バスが通ったわ」
「まあ、通る事もあるだろうね」
「私は何となくその観光バスの中をチラッと覗いたんだけど、そしたら一斉にシャッターを切られたわ。乗っていたのは外国人観光客だったみたいだけど、何故私を撮っていたのかまだ気になってるのよね」
「袴じゃないかな。だって着てたんでしょ?」
「・・・ああ、成る程。それにしても一言声を掛けろって話よ」
「ふぅん。でも、仙波さんは一緒に写真撮ってくださいって言われたらのこのこ着いて行くのかい?」
「そんなわけないでしょう」
「ほらね。バスの人達大正解じゃないか」


020.

(芳垣/比江嶋)

「うっぷ・・・」
「何?具合悪いなら俺に近付くなよ、風邪だったら移るだろ」
「冷たい!・・・いや、風邪じゃないし。ちょっと胸焼け・・・」
「二日酔いのサラリーマンか。何食ったらそんな事になるわけ」
「ホットケーキ・・・やけにデカイと思ったんだよ」
「半分食って帰ってから食えばいいものを」
「メープルとか好きなんだけど、あれってくるよな。胸に」
「俺は甘い物嫌いだ」