Ep7

06.


 帰る道すがら、恋愛経験値的には大分先輩である由衣ちゃんにそれとなく話を振ってみる。今までの人生を思い返してみれば、セピア色の面白味の無い人生だったと断言出来る。桃色の視界で見た世界や如何に、と言ったところか。

「そういえば、その、由衣ちゃんは今付き合ってる人とかは・・・?」
「今ですか?今はいませんよ。あたしって歳上の落ち着いてる人が好きなんですよね。一時期、鹿目先輩とかすっごく好きだったんですけど――あ、続き聞きます?」
「何それ初耳。ちょっと私にも聞かせてよそれ」

 ふふっ、と由衣ちゃんが含みのある笑いを漏らす。成る程、女の子って可愛い生き物だったんだと認識した。
 珠代ちゃんには悪いが、彼女に『女の子』らしい可愛さは無いように思う。いや、随所随所可愛い所はあるけれど、彼女は『女の子にモテる女の子』と言った方がしっくり来るだろう。本人曰く、「中学の時は女子中だったから、テントの設営とか椅子の設置も女子でやってたし、そういう意味で男子生徒が好む可愛さは無い」、との事らしい。的を射ているような、いないような。良くも悪くも自立しているのだと思う。
 そこから見てみると珠代ちゃんと由衣ちゃんは正反対。自分で何でも出来る、しようとする珠代ちゃん。人に上手く頼み事を出来る由衣ちゃん。

「まあ、終わった話だし、もう去年の話なんで部活中とかに蒸し返したりしないで下さいよ」
「分かった!約束する」
「初対面の時とかはすっごく好きだったのは本当なんです。けど、お互いを知っていくうちに冷めちゃったんですよね。記憶力とか体質の話じゃないですよ?だって何だか、兄弟とか、お父さんと話してる気分になっちゃって」
「あー、それは・・・嫌かもしれない・・・」
「あ、これは恋愛的な好きじゃなかったんだなって、思ったんです。今でも鹿目先輩は好きですよ。先輩後輩として」

 ――壱花先輩はどうですか、一緒くたになっていませんか。
 そう問われたようで背筋が伸びる。少しだけ考えてみたけれど、清澄くんを親類のように思った事は一度も無い。彼とはまったく血の繋がっていない、赤の他人だ。うん、クリア。

「そういえば、芳垣くんとはよく一緒にいるところを見掛けるけど、その辺はどうなの?」
「えっと、何で今、芳垣が出て来たんですか?」

 微妙な空気。よく一緒にいるところを見掛けるからだ、と前置きしたはずなのだが、当の由衣ちゃんは疑問顔を隠しもしない。どうやら見当違いの問い掛けをしてしまったらしい。