Ep7

04.


 今日は機嫌が良い。報告書はやらなきゃいけないけれど、休日なのに清澄くんに会えたし、部活のメンバーと和気藹々した状態で作業を進められる。部活が無い日は家でゴロゴロ過ごすだけだったので、何だか新鮮で良い。

「――言いたい事はそれだけですか、先輩」
「えっと、うん。それだけ」

 思いの丈を述べてみると、隣を歩く由衣ちゃんは心底疲れ切ったような溜息を吐いた。何か悪い事でもしたのだろうか。思い当たる節が幾つもありすぎて困る。
 答え合わせでもするかのように、由衣ちゃんは更に私に尋ねてきた。

「どうして上鶴先輩と行くって言わなかったんですか?そう言ったらあたし、じゃあ珠代先輩と待ってます、って言ってみんな良い思い出来たじゃないですかー」
「・・・あ、あー!成る程、その手があったわ!全然気付かなかった!」
「先輩の思考回路だけがあたしの誤算でしたよ、ホント。何だか上鶴先輩も乗り気だったし、行けるかなって思ったんですけどね」
「いやでもさ、別に購買に行くくらい行ってすぐ帰るんだよ?良く無いかな」

 ピタリ、由衣ちゃんは足を止めてジト目で私を見て来た。
 形の良い唇が「何を言っているんですか」、と棘のある言葉を紡ぐ。

「報告書なんてすぐ終わるんですから、すぐ帰って来る必要なんてどこにもないんですよ、先輩。詰めが甘いです」
「お、おう・・・そうかな・・・」
「最悪、ブッチしても文句を言うつもりはありませんでした。逆に、あたしと珠代先輩で飲み物買いに行っていたら直ぐに戻るつもりも無かったんですから」
「えっ、でも私の為にみんな集まってるのに、私が帰って来なかったら変――」
「先輩の恋愛事情も含めてあたし達は集まってるんです。男子部員は知りませんけど、少なくともあたしと珠代先輩はそうです、そうだったはずです」

 ――だから珠代ちゃんと喧嘩してたのか。
 2人の考えが食い違っていたから、言い争っていたのだ。それだけでとても申し訳無くなる。気にしなくても良いのに。清澄くんは平日だったら結構な頻度で私の部屋へ顔を見せるし、休日に会えただけでも僥倖というもの。
 などと言っている間に購買部へ到着。ただし休みで閉まっているので、隣に聳える自販機に足を向けた。

「何にしようかなあ・・・」
「甘い物が飲みたいような気がします」

 言いながら、由衣ちゃんはさっさとバナナオレを買った。

「私はコレにしようかな。・・・そういえば、清澄くんは何飲むんだろ」
「え、聞いてないんですか?というか、上鶴先輩って普段何を飲んでるんですか?」
「えー・・・何飲んでたかなあ・・・」

 少しだけ機嫌を直した由衣ちゃんが再びジト目になった。