Ep6

08.


 ***

 女の子2人と別れ、元来た道を戻ろうとする清澄を、折竹は呼び止めた。

「なんね?」
「なぁ、清澄。着いて来いって言うといて何やけど・・・お前、こっち寮と真逆の方向やんな?」

 夕日が目に差し込まれて少しだけ痛い。友人は微かに笑ったようだった。
 自分で誘っておいて――一緒に来てくださいとお願いしておいて、それに突っ込むのは野暮だとしか言いようが無い。けれど、訊かずにはいられなかった。あの面倒臭がりを絵に描いたような男が、何故、わざわざ反対方向になる道に着いて来たというのか。
 そしてそれは、折竹の為ではない事も明白だった。奴はそんなに親切心溢れた人間じゃない。それはこれまでの付き合いから分かりきった話である。
 それに――瀬戸桜はともかく、上鶴清澄と葉木壱花がたまに一緒に下校しているのは周知の事実。となると、これまで何度となく『わざわざ』反対方向へ『帰って』いた事になるのだ。

「散歩でもしたい気分やったんか?」
「いいや」
「――じゃあ、いっちゃんと少しでも長い間一緒にいたかった、とか・・・?」

 一瞬の間。その後、驚く程穏やかな声で清澄は訊ねた。

「なぁ、こういう時、何の話したらいいとやろね?実は寮と逆方向やったとよ、って言ったら、葉木ちゃんは遠慮してしまうとかな」