Ep6

06.


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 運動場。それは運動する為の場所だ。が、1学年を保有出来る程に広い校庭はしかし、外でやる全ての運動部を保有するにはまるで足りない。サッカー部と野球部は使う範囲が完全に被っているし、2つの部以外にも陸上部やハンドボール部、一応別ブースが設けられているテニス部だって外。
 そうなってくるとどうしても活動圏内が被ってしまう部は別の曜日に部活動する他無く、結果キツイだの怠いだのと言われる運動部には完全に休日の曜日が週の中に少なくとも2日以上は存在する。
 ――例えば、今日とか。
 帰り支度を終えた折竹聡は傾きつつある太陽を尻目に教室から退室した。クラスの生徒が数名残ってはいたが手を振り、会話の輪には入らない事を告げる。あまり疲れてはいないが用も無いのに校舎内へ残るのは好きじゃなかったのだ。

「――お」

 下駄箱へ向かうべく歩を進めていた折竹は不意に隣のクラス――5組にまだ人が残っている事に気付いた。何の気なしに覗いてみれば、最早必然、瀬戸桜がポツンと外を見ているのを発見する。
 今まで一度だって祈った事の無いどころか存在すら忘れていた神にあらん限りの謝辞を述べ、締まりの無い笑みを浮かべた折竹はふらり、と5組の教室へ足を踏み入れた。

「瀬戸さん、何しとるん?帰らんでええの?」
「・・・壱花ちゃんが」
「ん〜・・・いっちゃんを待ってるって事?」

 頷いたのを見て、ああやっぱり彼女等は友達なんだな、とどこか遠くからそう思う。タイプ相性というか、先の一件が無ければ彼女達が友人同士だなんて思いもしなかっただろう。

「俺も今日、部活休みやねんけど一緒に帰ろっかなー・・・」
「喜ぶね」
「いっちゃんが?」

 答えは無い。沈黙は肯定の意として、自分と葉木が同じクラスでそこそこ話す事をどことなく知っているようだ。葉木の方は鈴島美鳥の方に用があるのだろうが、そこはそれ、学校の付き合いというものだろう。
 子供社会である学校での友人関係や知人関係なんて酷く曖昧だ。友達かと言われればそうでもなく、しかしただの知り合いかと言われればそれも当て嵌まらない。その上、相手と自分の認識がズレている事も大いにあり得る。

「いっちゃん、今日は部活行かんの?」
「そういう気分じゃないって」
「ふーん。まあ、機嫌にムラのある子やからね。当然っちゃ当然か」
「部活」
「・・・あ、俺?陸部は今日お休みやねん。司の奴も心研部に顔出す言うてたし、割とみんな自由に過ごしてんねんな」