05.
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放課後、心研部の部室へ向かう。今日は部活は無かったが、昼に百合子ちゃん達と話した曜日を空けてもらわなければならないので、部室の妖精である月原くんにそれを伝えようと思ったのだ。
――面倒だから誰もいませんように。
そう祈りつつ部室のドアを開ける。まず目に飛び込んできたのは須藤くんと鹿目くんの後ろ姿。そしていつもの場所に座る月原くんだった。何か話し込んでいたらしく、後ろ向きだった二人が振り返る。
「ああ、葉木さん。丁度良かった」
「彼女は誰だ?」
しきりに首を傾げる鹿目くんに月原くんがそっと耳打ちする。思った以上にカオスな事になっている部室に早くもウンザリした気分になった。どうして部活があるわけでもないのに人がこんなに集まっているのか。解散しろ。
しかも明らかに面倒な話をしてくるような前置き。深刻そうな顔をしているが、一体何を話し合っていたのだろうか。
「えっと、どうしたのかな?」
「うちの部、1年生が一人もいないだろ?このまま引退するのはマズイから、1年の部員を増やさないかって話をしてたんだよ」
「そういえばいないね、1年」
「それどころか2年も2人しかいないよね。これ、俺達が引退したら部活潰されるよ?最低、3年を抜いた状態で5人は部員がいないといけないんだから」
言われてみれば由々しき事態だ。引退なんて意識していなかったけれど、年が明ける前には3年生は引退する義務がある。運動部はインターハイの関係で大会優勝すれば10月くらいまで部活にいるが、それ以降は引退。つまり区切りの無い文化部より早い段階でフリーになる。
成績優秀な須藤くんや鹿目くんは恐らくギリギリ、12月後半まで部活にいたって何ら問題はないが、他の面子がそうだとは限らないので実質12月まで部活にいる事は不可能だ。となると、やはり今のうちに1年生でも2年生でも新しい部員を入れる必要がある。心研部は存在の意味不明さから教師陣には嫌われているし、隙あらば廃部にしようと企んでいる節があるので早急に手を打つべきだ。
そういえば、と月原くんの柔らかい声で我に返る。そうだ。結局は部員を増やすも減らすも彼次第。部長なのだから。
「葉木さんは何か用事があったんじゃないのかな?」
「えっ?・・・ああ、そうだった。再来週の日曜日、ちょっとお墓詣りに行くから私はお休みね!」
「・・・そう、分かった」
須藤くんが少しばかり呆れた顔をした。
「え?葉木さん、そんな事を言いに来たのかい?わざわざ、休部の日に?」
「あー、うん。ピンポイントで活動日と被ったら悲しいな、って」
「まあ確かにそう言われちゃえば、そこにわざわざ予定入れたりはしないだろうけれど」
――今日はバタバタしてて色々面倒だな。
鹿目くんと目が合い、それとなく目を逸らす。バタバタするのは嫌いだ。こういう時は何か起こる可能性が高いし、慌ただしい雰囲気が胸に詰まる。もっとゆっくりやればいいのに、そう言い出すのはいつだって物臭な私なのだろう。