04.
粗方片付け終わり、自分達が教室へ帰る支度をし始めた頃だった。それまで黙って手を動かしていた成怩ェふと訊ねてきた。
「そういえば、さっきは何を悩んでいたんだい?相談なら乗るよ。恋愛講座なら任せて!」
「え?でも成怐Aお前カノジョいないやんけ」
「ちょっと!それは言わない約束でしょ!!」
「そ、そうか・・・すまん」
思いの外鋭い剣幕でそう言われ、咄嗟に謝る。が、これは自分が謝る話ではなかったような。
「別に何も考えてないわ。ほら、司書さんと交代の時間や」
「何だよぅ。ああでも、折竹は陸部だからなあ。俺みたいなのに何か訊かなくても、自分でどうにかするよね」
「あまり否定でけへんのやけど、偏見やめーや。奥手な奴もおるんやで」
部活によっては色があるというか、空気感があるというか。それはこの学校も別ではない。例えば陸部は女子人気が一番高いモテ部活であり、部員も手慣れている生徒が多い。逆にサッカー部はモテるのに部長が硬派なせいか、隠れファンが多いだとか、野球部は何故か不人気だとか。ついでに言うと運動部の中でも剣道部と水泳部は変人が多いなどという偏見じみた噂もある。
が、必ずしも皆そういうわけではないので一緒くたにしてしまうのは失礼と言うものだ。成怩烽ワた、『例外』がどこにでもいるという事を深く知っているらしい。意味深な笑みを浮かべている。
「はいはい、じゃあ解散な。引き継ぎは俺がしといたる」
「さすが部長!じゃ、俺は教室に戻るよ。また来週」
ひらり、と手を振った成怩ヘそのまま一度も振り返ること無く図書室を出、自分の教室へ帰って行った。
とにかく、奴はもういいから今日うっかり盗み聞き――否、耳に入ってしまった話を瀬戸桜にしてみよう。彼女、どんな話題に食いついてくるか未知の部分があるので。