02.
「火曜日」
それは今日の曜日である。桜ちゃんの有り難いお告げに頷いた百合子ちゃんは早速こう提案した。
「揃える物も必要だし、出来るだけ命日に近い方が良いわぁ。来週以降がいいわね」
「ま、それなら壱花も部活を上手く回避できんじゃね?」
「うちの部は大丈夫でしょ。むしろ人数が集まらないように早めに伝言しておいた方が良いかな」
「はぁ?お前、言ってる事滅茶苦茶だぞ」
「いいの。私目線では合ってるからね!」
再来週、そう断言したのはやはり桜ちゃんだった。予定を確認し終えたのか、スマホを机の上に投げ出した彼女はもう一度同じ言葉を繰り返す。
「再来週の土日なら」
「おう、あたしもそれでいいぜ。どうよ、百合子」
「空けておくわぁ。壱花も、良いわね?」
「はーい、了解」
予定があっさり決まりすぎて拍子抜けだ。百合子ちゃんも桜ちゃんも、部活に所属してはいるが心研部同様に自由参加型っぽいところがあるので成立したのだろう。
「あのさ、墓参りって具体的に何を持っていけばいいんだろ?あまり失礼な事したら、怒られそうじゃない?こういうのって」
「あー、それはまずいな。たぶん来年も行くだろうし、心象は良くしておいた方が良いだろ」
「麻純ちゃん、口調が」
「桜・・・それ、あたし達が注意し合うのって不毛だと思わね?」
珍しく啀み合う麻純ちゃんと桜ちゃんを尻目に、百合子ちゃんへ視線を移す。何か悩んでいた彼女はふ、と笑った。
「私も分からないから、羽多野くんに頼んでおくわぁ。私達が悩むより、羽多野くんに任せておいた方が面倒な事にならなくていいと思うの」
「そうだね。今日いないし、羽多野くん」
厄介事とは欠席者に押し付けられる。大人、或いは保護者会の鉄則であり、我々は今それを学んだ。
「つっても、服装は?普通に私服で行っていいのかよ」
「え、私服以外何を着て行くつもりなのぉ?制服?」
「えー、無いでしょ!学校無い日に制服とか!」
「服装・・・」
一人はスーツ、一人は制服、一人は私服というように服装がバラけるのはマズイ。目立つし、そもそも県外にまで出る予定なのに制服とか有りなのか。
ちら、と時計を見る。昼休み終了まで後15分。
話は終わっていないがそろそろ解散するべきだろう。少し前、麻純ちゃんと揉めた時に授業を遅刻してしまったが、教科担当から苦々しい顔をされたのは記憶に新しい。