Ep6

01.


 昼休みの図書室というのは案外賑やかなもので、本を返しに来る者、借りる者、或いはただ時間を潰している者、静かな場所で課題をやっている者などその用途は多岐多様だ。カウンターの前には数人が座れる大きな机と椅子が何セットか置いてあり、いつもはたくさんの生徒が訪れる場所である――そう、いつもは。

「やっぱり目立つよね、私達」
「知るか。勝手にあたし達にビビって離れて行ったんだろ」

 小さく溜息を吐く。
 図書閲覧場所である憩いのスペースは今や人っ子一人いないし、カウンターに用事がある生徒もこの机を遠巻きにしている。
 それもそうだろう、6人掛けのこの机は現在4つの席が埋まっている。私の他に芦屋麻純、柏木百合子、瀬戸桜が座っているからだ。それは一種異様な光景なのだろう、学校の悪い意味で有名な4名が顔を付き合わせて何か小さな会議を開いているのは。
 つかさあ、と麻純ちゃんが不満げに唇を尖らせた。

「羽多野の奴はどーしたんだよ。あいつ、幹事っぽいじゃん?誰がとりまとめるんだよ、この面子を」
「羽多野くんは欠席よぉ。いきなり用事が入ったって言ってたわ」
「またそれかよ。いい加減にしろよホント」
「部活」
「あん?部活ぅ?あいつ、何か部活なんてやってたっけ?」
「してる」

 桜ちゃんの明瞭簡潔な言葉に再び麻純ちゃんは舌打ちした。彼女はいつもこうなので特に思う所は無いのか、桜ちゃんはスマホに視線を落としている。

「でも、麻純ちゃん。羽多野くんは予定は私達が決めた日にちに合わせるって言ってたよ」
「そうねぇ。羽多野くんはいつも暇そうだから、それでいいのよね」
「部活やってんだろアイツ・・・」

 土日平気なのかよ、という麻純ちゃんの尤もな発言は受け流された。所詮、『電波』とやらの集まりである。そんなものだろう。
 さぁさ、と百合子ちゃんが微笑んだ。羽多野くんがいないのならば。この面子をまとめ、話を終結させるのは彼女の役目だ。それを分かっているからこそ、文句ばかり言っていた麻純ちゃんもその口を閉ざす。

「じゃあ、まずは日取りを決めるわ。いつ行こうかしら、墓参り」