夏休み企画

08.


 しかしまあ、七不思議なんて学校生活に飽きた学生が生み出した妄想だ。実際にそれが起こるかと言われれば微妙なところである。ああ、次の部活は七不思議解明とかでも面白そうだ。時間を無駄にしそうだが。
 ――何か起こるとすれば、須藤くんのギミック。
 先程の呻き声といい、須藤くんは私達にちょっかいを出すのが大好きだ。なら、絶対に通るであろう部室に何か仕掛けておくのは自明の理。そう分かってしまえば何が来ても驚きはしないだろう。

「じゃあ、開けるよ、って、清澄くん!ノブが見えないからちゃんと照らしてよ!」
「あばばばばばば」
「日本語まで不自由に・・・!もう、先に入るからね」

 ノブがあっさり回る。特に緊張すること無く、いつも部会の時にそうであるようにドアを開けた。カメラを構える。

「・・・清澄くんってば。中が全然見えないんだけど」
「じゃ、じゃあ葉木ちゃんが懐中電灯持っとかんね!俺には無理!」
「カメラ片手で撮るの難しいでしょ。いいから早く、部屋の中心辺りを照らしてね」
「うぐぐぐ・・・」

 いつの間にか私の後ろを着いて来ていた清澄くんが薄目を開けつつ、頼んだ通り部屋を映す。そこには夏休み前、最後に使った後のまま放置されたいつもの部室があった。当然である。

「おー、良い感じ良い感じ。よし、後一枚撮って――」

 ガタンッ、音が響いた。丁度、いつも月原くんが立っている辺り。そう、部長椅子とか勝手に呼んでいる教壇周辺から。

「ヒィァ!?だ、誰かおっとね!?」
「え?何だって清澄くん。ちょっと、前の方照らしてみて。いつも月原くんが立ってる所」
「無理ッ!見たくなかけん、はよ出よう葉木ちゃん!」
「うーんでも、不審者だったらほら、ケーサツに連絡しないと・・・」
「なおさら危ないやろ!ほら、はよ・・・!」

 清澄くんがちっとも動く気配が無いので、仕方無くシャッターを切る。目に痛い光、その中に人影のようなものが浮かんだように見えて息を呑んだ。まさか須藤くん、ここで待ち伏せとかしてた・・・?
 怯えきって座り込んでいる清澄くんの手から懐中電灯を引ったくり、今度こそ教壇を照らした。当然の如く、そこには何も無い、いない。
 ぞわっ、と背筋に嫌な汗が滲んだ。基本的に何も無ければ怯えたり怖がったりしないタイプではあるが、気付いてはいけない事実に気付いてしまい足が固まる。
 ――と、今度は清澄くんが私の懐中電灯を取り上げた。我に返って見ればすぐに思い至る。あ、これ清澄くん限界だわ。

「もう無理!怖かぁ!探索終了!帰るよ!!」
「ちょ、ま――」

 腕を掴まれた。凄い力だ。後先考えず走り出す清澄くんに対し、私は悲鳴を上げた。陸部足速すぎるし、置いて行けと言う暇も無い。強制ランニングマシーン爆誕!結局は生きている人間が一番怖い。