夏休み企画

07.


 ギャーギャー騒ぎながらも陸上部の部室前に差し掛かったところだ。「うぅうぅうううう・・・」、という動物の鳴き声だか人の泣き声だかが聞こえたのは。丁度一瞬だけ静まり返っていたところにそんな声が聞こえればパニックは必至。
 清澄くんが大袈裟なのか本気なのか、一層大きな悲鳴を上げた。彼、すっかり心霊研究部に馴染んだなって、最近ではしみじみとそう思う。

「なん!?なんでお前等そんなに冷静なん!?」
「韻でも踏んでいるのかい、清澄。それにしては下手クソだけれど」
「うんうん、清澄くんは最近、心研部が板に付いてきたなって」
「焦れや!!その生温い笑顔今すぐ止めんね!癪に障るっさねそれ!!」
「あっ、清澄くんライト揺らさないで。何か具合悪くなってくるから・・・」
「・・・すまん」

 それにしても、と須藤くんの方を振り返る。背後から聞こえてきたって事は彼の細工なのではないか。清澄くんが怯えているのを見て愉しそうにしていたし、きっとそうだ。

「須藤くん、こんな大男暴れさせたら危ないんだから自重して・・・あれ?」
「ど、どど、どうしたと!?」
「落ち着いてよ。・・・須藤くんがいなくなったんだけど・・・どうしようかな」
「あの野郎」

 今日の清澄くんはとっても元気だ。
 いつものナマケモノ以上に怠けている彼からは想像もつかない。テンション高いね、と声を掛ければ喧嘩を売っているのかと返された。心外である。

「まあまあ、幸い懐中電灯もデジカメもある・・・あ」

 気付く。ああこれはきっと須藤くんの気遣いだと。やり方がどう見たって愉快犯のそれだが、実際は私が少しだけ期待していた通りの展開に落ち着いている。どうしてこう、この部の部員達は人の恋愛事情に首を突っ込みたがるのか。親切心でないのは確かだ。
 捜すかは敢えて聞かなかった。

「仕方無いし、私達だけでもちゃんと写真撮って帰ろう?」
「・・・分かった」
「清澄くん清澄くん、光が揺れてるから懐中電灯はしっかり持って」
「アッハイ」

 さて、今までは部室が施錠されており、中に侵入する事はおよそ不可能だった。が、この部室だけは違う。
 夏休み前は毎週必ず1度は集合し、部会を行った場所。
 連休に入ったのでそのまま放置されているが、それでもまだ2週間しか経っていない。当然、ここに物を置くのは部長が禁止している為に盗まれるような物は無い。椅子と机があるのみだ。
 毎年変わる学校の七不思議に必ず入るこの部屋の実力を確かめる時が来た。

「――と、いうわけだから、頑張って行こう!」
「葉木ちゃんはあれかいね?俺に何か恨みであると?もうハッキリ言っとくけど、葉木ちゃんの七不思議発言で俺、ダッシュ帰宅体勢やけんね?」
「えっ、陸部に足で追い付くなんて無理だよ・・・」
「追い付けるかって発想に至った根性だけは褒めとくわ」