06.
何か私の謝罪によって話が中断されてしまったらしく、刺々しい溜息を吐いた清澄くん。しかし次の瞬間にはいつも通り毒の無さそうな人畜無害そうな、悪く言えばボーッとした顔に戻った。実はめっちゃ怒っているのかもしれない。一瞬我を忘れて文句を言ったが、話の腰を折られたせいで冷静になったのかも。ごめん清澄くん。私の事は怒らないで欲しいけど、須藤くんは一度しばいて欲しい。
「ねぇ、今凄く失礼な事考えてなかった?葉木さん」
「ぎゃあああ!?えええ、エスパー!?」
「ふぅん、考えてたんだ」
「考えてたも何も、私の顔見えないじゃん!何!?背中で判断したの?私の背中、何か企んでいるみたいな感じなの!?」
恐すぎる。何故私の後ろを歩いている須藤くんに私の考えが伝わるのか。黒魔術とか使ってても彼なら違和感無い気がするのが一番恐い事実だ。
「葉木ちゃん。ちょっと静かにしとかんと。近隣の迷惑になるから」
「そんなに騒いでたかな!?やっぱりちょっと怒ってるでしょ清澄くん!!」
「葉木さん葉木さん、指摘しちゃ駄目だよ。清澄だってたまには動揺する事だとだってあるよ、ねぇ?」
「す、須藤くんはぶっちゃけ幽霊より恐いんであまり私に近付かないで」
ピタリ、不意に清澄の足が止まった。今度はぶつかる前に急ブレーキを掛ける。今思ったがこの班は玉突き事故多すぎ。改善すべき。
「ど、どうしたのかな・・・?」
「・・・いや、ちょっと嫌な事思い出した」
そう言う清澄くんの横顔は少し青い。ああ、さっきの発言の中に彼のそこそこ逞しい想像力を掻き立てる単語でもあったのだろう。勝手に先週あった心霊映像の番組だとか、本当にあった怖●話だとかを思い出したに違い無い。
クスクス、綺麗に笑う須藤くんの顔は活き活きしていた。意地悪な事この上無いのに彼にやられると不思議と納得、からの赦してしまう最凶コンボが組み立てられてそれが恐い。
「そういえば葉木さん、ちゃんと写真撮ってる?鹿目に怒られるよ」
「あっ!忘れてた」
「じゃあ、ちょっと止まってよ清澄。お前が懐中電灯を持っているんだから先に行かれたら俺達、暗いじゃないか」
「あ、ああ・・・」
デジカメを起動する。使いやすいタイプでよかった。そうでなければ写真撮るまでに一苦労である。パシャパシャ、と試運転の意味を込めて適当にシャッターを切ってみる。強烈なフラッシュの光が目の奥にまで届くようで頭に鈍い痛みが走った。
「・・・かん」
「はい?どうしたの、清澄くん」
「いかんわこれ、フラッシュの光恐すぎやん!!」
「はあ?」
デジカメを止めろと言われるが部活動なので止めるわけにはいかない。というか、恐らくは夏休み中滞った部活の報告書を出さなければならないので止めると大変な事になる。さすがに同じ区域を2周する気にはならないし。
清澄くんには悪いけどここは聞かなかった事にして勝手に部活動しよう、そうしよう。ぶっちゃけその巨体で恐いとか言われてもネタにしか思えないので黙って欲しい。
「葉木ちゃん今、何か失礼な事考えとらんかった!?」
「だから!さっきからそれエスパー!?どうなってんの陸部!」