夏休み企画

04.


「あはは、何コレ俺がアウェーだよね。むしろ」
「ヒィ、いや私がアウェーだと思うんだけど・・・」
「この流れで行くと俺はホームグラウンドって事になるやん。というか、みんな同じ部員やけど」

 1と書かれた組。私と須藤くん、そして清澄くんだ。驚きの陸部率だが須藤くんのお気には召さなかったようだ。正直、お化けだの幽霊だのより須藤くんの方が恐い。
 そんなのまだいいっしょ、と項垂れた芳垣くんが次の瞬間にはああああ、と奇声を上げた。何が彼にそこまでさせると言うのか。

「これ!ただのサッカー部じゃないっすか!しかも女の子いないし!!」
「それはこっちの台詞だ・・・何故くじを引いてまでお前の面倒を見なきゃいけないんだ・・・」
「ふむ。随分と部活が偏っているな。しかしくじ引きは絶対」

 2組。芳垣くんと雄崎くん、そして鹿目くんだ。なお鹿目くん以外はサッカー部。アウェーの中堂々としている副部長にはさすがの一言しか出ない。
 芳垣くんの定理でいくと一番得な組み合わせになったのは恐らく月原くんだろう。案の定、我等が部長さまはいつも通り――いや、いつも以上に穏やかな笑みを浮かべている。

「ははは、両手に花って言うのかな、こういうの」
「由衣、あなたもう怯えているの?月原くんはあなたを背負って動ける程、アグレッシブな人じゃないわよ」
「怖がってないですよー!むしろ月原部長がまったく頼りにならなさそうでそれが恐ろしいんですって!!」

 最後3組。月原くんに珠代ちゃんと由衣ちゃん。何て華やかな面子なのだろう。こっちに入りたかったけれど、そうすると女子3人固まることになる。じゃあ次は場所割りをしようかな、と部長が高らかに宣言する。
 まあ、組み分けの方は私的には勝ちのようなものだし、特に怖がったりはしないからどこが当たっても問題無いだろう。出来れば長いコースが良いというだけで。

「デジカメの裏を見てくれないかい。ラベルが張ってあるから、そこが持ち場だよ。とにかく写真だけは絶対に撮ってくるように」

 持っていたデジカメをひっくり返してみる。成る程、確かにラベルが張ってあった。『部室棟』と書かれている。

「部室棟か・・・うん、分かった。頑張ろうね、二人とも」
「何か企んどる、司?そんな顔しとるよ」
「まさか。いやぁ、楽しみだね、部室棟には地下があるわけだし」
「あ」

 清澄くんの目が泳いでいる。どうやら何かしらスイッチが入って少し怖がっているようだ。セルフ恐怖体験型は今回厳しいかもしれない。

「他の所はどこになったの?」
「私達は本棟。教室がある棟ね。ま、一番起伏の無さそうな場所ではあるわ」
「こちらは別棟だな。・・・ふむ、まあ俺がここを担当するのは妥当だな。他に当たらなくて良かったと言うべきだろう」

 教室がある本棟は恐らくまったく恐くないはずだ。机と椅子が何かを連想させて怖い、という特殊性があれば別だが。鹿目くんが言う通り、一番ヤバイのは間違い無く別棟である。何故なら理科室から美術室、家庭科室まで特殊教室が揃い踏みする棟だからだ。

「よし、じゃあ一通り見て回ったらここに戻って来てね。何か連絡するかもしれないから、ケータイはこまめにチェックするように。じゃあ、開始」

 部長の楽しげな声に押されるようにして3組に別れたメンバーはそれぞれの持ち場へと散って行った。