ドキドキ☆百物語縮小版

第7話


「やっと僕の番か。といっても、捉えようによってはあまり怖い話じゃないかもしれないね」

 7話目、月原和幸。揺れる蝋燭の火が彼の微笑む顔をありありと映し出している。

「心霊研究部の部室の話をするよ。みんな知っているとは思うけれど、うちの部室って名前が名前だからか毎年七不思議のラインナップに入っているんだ。凄いよね。だって七不思議の8割が別棟関係なのに。あ、今年は葉木ルームも入っていたよ。おめでとう。
 さぁ、この部屋で以前起きた事を紹介しよう。僕達が1年だった頃の12月の話なのだけれど、こんな風に百物語モドキみたいな事をしていてね。蝋燭の数も人数分、椅子も人数分設置したんだ。けれど、何故か1つ少ない。仕方が無いから1つずつ追加して、それでやっと百物語を始めたんだ。
 その時は僕が締めの1つ前の話を担当したのだけれど、僕が蝋燭を消した後、室内が真っ暗になってしまってね。あれ、と思ってすぐ電気を点けたら椅子だけがぽつんとおかれていて、空席になってしまった席が1つあったんだ。僕はすぐに全員の顔と名前をチェックしたよ。誰が抜けてしまったのか調べる為にね。けれど無駄だった。記憶していた中にいなくなった生徒はいなかったからね。
 まあ、この手の話はありがちだけれど、実体験の場所で昔の事を振り返るのも、悪くないよね」

 ふっ、と蝋燭の火が消える。

「ちょ、ちょっと・・・そういう怖さは反則じゃないっすか!?実際に起きた場所とかふーん、じゃ済まされないんすけどぉ!!」
「そうやって俺がよく行くところの話するの、止めて欲しか・・・」

 光と清澄が交互に抗議の声を上げた。話した当の本人はふふ、と怪しげな笑い声を上げるのみだ。

「わぁ、もう真っ暗だね。今回は実体験だったからか、パンチが効いたのは無くて微笑ましかったよ、月原」
「そうだね。生温い気もするけど仕方が無いよ」

 そうだ、と葉木が手を打った。

「鹿目くん、何かケチつけないの?月原くんの話に」
「特に無いな。これ以上掘り返しても怖い話にはならなさそうだ」