ドキドキ☆百物語縮小版

第4話


「これはなんね、最後に最大級のオチを言う決まりでもあっと?プレッシャーやね」

 四番手。上鶴清澄。割と怯えがちな彼は今回、まだ平静を保っている。蝋燭を残しての逃亡は無さそうだ。

「俺は本棟の屋上の話ばしようか。んー、正確に言うと本棟の屋上から見える別棟の話なんだけど。
 授業をサボる時は屋上におる時が多かとよ。何でかって言うと、葉木ルームは別棟やけん人がいない時は床が軋む音がよう響くとさ。あの部屋何かと危険物の多かけん、音がしたら理科室の先生とか美術の先生とかが見にくっとよね。そんなんだから、授業サボりたい時はあそこでの昼寝は向かん。やけん俺はいっつも屋上で昼寝して時間ば潰すとけど、本棟の屋上はどの棟よりも高いやろ。フェンスにうっかかってると丁度正面に別棟が見えるとよ。斜めの角度やけんかな、教室の中も半分くらい見えるかなあ。
 理科の実験やってるのを眺めたり、美術やってるの眺めたり、わりと楽しかけんオススメよ。
 でもいつからやったかなあ・・・4月くらいからかね。あの、別棟の入れん部屋あるやん。物置になっとって、危なか、つって鍵が掛かってる部屋。あの部屋ってよくよく考えてみたら色々おかしかとよ。施錠出来るのは特別教室だけってルールがあるやろ。やけん、葉木ちゃんの部屋は鍵が掛からんごとなっとる。その定理で行くと、あの物置に鍵を掛ける必要は無かし、何より屋上から見ててもあの部屋ってほぼ何も置いとらんけん。
 で、その部屋やけど、屋上から見とったら何かひらひらしとる事のあっとさ。なんか、制服のスカートみたいなのが。それを辿って行ったら白いブラウスも見えるけん女子生徒じゃなかかなぁ。直接会ったこと無いけん知らんけど。
 なんか先生のおつかいかな、って最初見た時は思ってたとけど、俺が屋上で時間ば潰しとる時はいつもおるとさ。さすがに変だなーっち思ってちょっとその子ば観察してみたと。あんまジロジロ見ちゃいかんとやろうけど、まあ仕方んなかよね。したらずーっとその子動かんとよ。窓も開いてないのにスカートがひらひらひらひら。で、ふと気付いたと。その子、毎日見とくうちにだんだんこっちを向いてきとるなって。
 それに気付いてからはあまり屋上には行かんくなったけん詳細はよう分からんけど、ただ、俺が別棟に行った時その教室を覗いてみようとしたとけど、やっぱり鍵掛かっとったね。というか、鍵穴錆びとったとけど、あれは鍵開くとかねえ」

 ふっ、と蝋燭の火が消される。

「へぇ、清澄。確かにお前、屋上が好きなのに最近は行かないと思ったよ。ねぇ、葉木さん」
「そうだね、須藤くん。だっていっつも私の部屋にいるし、清澄くん」
「あれ、遊びに行っちゃ駄目?」
「ううん。おいでよ葉木の部屋!」

 はいはいはい、と珠代が口を挟む。

「上鶴くん、よくそんな恐怖体験してパニックにならなかったわね。あなたの日頃の行いを見ていると平然としているのに違和感さえ覚えるわ」
「怖さのツボが私達とは違うからじゃないかなあ」

 ところで上鶴、と鹿目が口を開いた。もうお決まりになりつつあるので、一同が固唾を呑んで見守る。

「お前が屋上へ行かなくなった理由は、その子が振り返るからじゃないだろう」

 ああ、と清澄の顔から表情が消えたが、それを照らす光はもう無い。

「そうやね。あまり気持ちの良い話じゃなかけん、言いたくなかったけど、屋上からの角度じゃ本来スカートの裾は見えんやろうね。よっぽど足の長か子か、或いは床から両足が浮いてる、とか?そう言えば、あの子のスカート。ひらひらしてるっちより、揺れてるって方が正しかった気もするとよ。よう俺の話で分かったね、鹿目」