ドキドキ☆百物語縮小版

第1話


「一番手は私ね」

 そう名乗りを上げたのは珠代だった。彼女はジャンケンに一人勝ちしたので1番最初に自分のターンを終わらせてしまう魂胆である。

「私は心研部に入って初めての活動の時に起こった体験を話すわ。そうね、部員なら例の通過儀礼を知っているでしょう?一応、心霊研究を行っているわけだから近くの神社へ行って、事情を説明してお守りを買うやつ」

 知ってるよー、という各々が反応を示す。

「あれ、ちゃんとお祓いをしなさい、って意味でもあるのだけれど、実は貯まり続けている部費を多少なりとも消費する為のものなのよ。部費は使わないと削減されてしまうでしょう?
 それで私はその日、一人で部活中に神社へ行って、神主さんにこれこれこういうわけだからそれに合うお守りを購入したい、って説明したの。神社が賑やかなシーズンではなかったから、神主さんはどのお守りが良いか親切に教えてくれたわ。
『最近の子は怖いモノ知らずなんだねぇ、本当はそういう事はしない方がいいけれど、ちゃんとお祓いに来ようって気があるだけいいのかなあ』――
一頻り話をした神主さんは帰り際、私にこう訊いてきたの。『ところで、その肩のはそのままでいいのかな?』って」

 ふっ、と蝋燭の光が消える。光源が一つ減ったせいか、部室内はぐっと暗くなった。

「ひぃぇぇぇ・・・マジすか!?マジすか!?うわぁ、俺もたぶん同じ神社に行ったのに・・・」

 ぐすっ、と涙声でそう言ったのは光だった。彼はもうすでにガタガタ震えており、辛うじて持っている蝋燭の光は小刻みに揺れている状態だ。

「なかなか怖かったねぇ。他人事やけんかな、あんまり俺はビビってなかけど・・・」
「あ、清澄くんっていつも怯えているわけじゃないんだ・・・!」

 ところで、と鹿目が視線を珠代へと向ける。

「その『肩の』はどうしたんだい?」

 ふ、と珠代は微笑んだ。その笑みを隣に座っていた須藤の蝋燭が映し出す。

「私、除霊だとか霊の存在だとか、あまり信じていないの。だから、そのままよ。去年の12月からずっとね」