Ep5

03.


 浮き足だった彼女達を止めたのは折竹でも、ましてや清澄でもなかった。

「すまない、訊きたい事があるんだが」

 唐突に顔を覗かせた鹿目徳仁である。彼は言うまでも無く心霊研究部の副部長だが、あまりにもタイミングが悪過ぎる。しかもこちらへ視線が合っていない事からも推測出来るが、不特定多数に話し掛けているに違い無い。
 珍しく面倒くささを全面に押し出した清澄が舌打ちまでして鹿目に声を掛けた。

「部員に用事か、鹿目?ちょっと今、俺達急いどっとよ。用件ば言わんね」
「いや、心研部には用は無い。ここに芦屋麻純が来なかったか?教室から凄い剣幕で飛び出してね。追い掛けたんだが、足が速すぎて追いつけなかった」
「ハァ?さっき来たけど、もう出て行ったぞ。お前、何で芦屋さんば追い掛けとっとさ」
「担任の・・・名前がちょっと出て来ないが、教師に面倒を見るように頼まれている。まあ、彼女はああ見えて不祥事はまだ一度も起こしていないが」

 成る程。話が繋がった。そういえば鹿目もまた2組である。あの二人はクラスメイトだったのだ。
 あからさまに苛ついた様子の仙波が鹿目に詰め寄った。

「何でちゃんと見ておかないのよ・・・!お陰様で壱花が・・・」
「その件に関しては悪かったと思っている。そういえば、彼女は葉木壱花という生徒に言いたい事があるだとか言っていたな。かなり頭に血が上っているようだったので、頭を冷やせと止めたかったんだ」
「それ、ヤバイ奴やないの?いっちゃん何したとやろね・・・」

 鹿目が葉木のクラスと名前を覚えていれば恐らくは一番に6組へ来たのだろうが、彼の体質上それは不可能だろう。そもそも葉木が誰だったのかすら忘れているはずだ。どうして教師は彼に問題児の世話係をやらせているのか。甚だ疑問である。

「どうする、清澄?大事にはならんと思って、あまり慌ててなかったけど、まずい事になっとるみたいやで」
「・・・仙波さん。葉木ちゃんば捜そうか」
「あら、上鶴くん。たまには良い事言うのね」

 同行しよう、と鹿目がそう呟いた。

「俺の予想では校舎裏か園芸部にいるはずだ。いなくなった彼女は大抵その辺を彷徨いているからな」
「面倒、ちゃんと見とっとねぇ、鹿目」
「当然だ。手抜きはしない」

 黙々と机を片付けていた美鳥が話の輪に加わる。変なところで律儀な彼女はバラバラになっていた机を昼休み前の状態に完全修復していた。

「校舎裏から回ろう。あんま嬉しくない話やけど、園芸部には柏木百合子がおるかもしれん。出来れば校舎裏の方にいて欲しいなあ」
「柏木さんがいる場合、同じテリトリーに芦屋麻純がいるとは思えないけれど」
「そうなんやけど・・・柏木と芦屋が喧嘩しとるとこ見たって情報ひとっつも無いねん。仲良しかもしれんよ?」

 腑には落ちないけど、と美鳥が溜息を吐く。ただ、情報元が分からない情報も多いが彼女の持っている情報は当たりの方が多い。その可能性も視野に入れておく必要があるだろう。