17.
***
唐突に背後から凄まじい音が響き、折竹は盛大な悲鳴を上げた。当然である。ついでに、足辺りにチカチカと熱を感じる。
「なに!?なんやの!?」
「落ち着いて」
瀬戸桜の声で我に返った。しかし、これは不可抗力というものでは。一度落ち着いてしまえば後は情報が繋がる。恐らくはこれが葉木の言っていたギミックの一つだろうか。
「これ・・・爆竹?」
「マジか。えぇ・・・ここまでやるんか・・・」
「・・・よく分からないけれど、壱花ちゃんは音がこんなに鳴るのは、好きじゃないと思う」
「あ、ああ・・・そうなんか」
今までで一番会話が成立している事に感動すら覚える。我ながら剽軽な性格をしていると思うが、男子高生などこんなものだ。しかも、仕掛けしてるって瀬戸にバレバレである。
葉木ではないとすると――清澄だろうか。あいつは確か、みんなで花火しようと言えば何故か爆竹を買ってきて女子部員の顰蹙を買うような奴だ。爆竹の何がそんなに面白いのか甚だ疑問ではあるが、本人が楽しいと思うのであれば楽しいのだろう。音が鳴るのが良い、と言っていた気もする。
「行こう。爆竹は恐くないけど、こっちに向かって投げられるのは、いや」
「せ、せやんな、うん!」
成り行き。
先程の倍は速くなった瀬戸の足だったが、その手は自分の手をしっかりと引いている。誰よりも彼女は男前である。これを機に、もう少し会話を試みても良いのでは無いだろうか。
「・・・瀬戸さんは爆竹とか嫌いじゃないん?女の子ってあまり、こういうの好きじゃないやん?」
「麻純ちゃんが好きだから、私は嫌いじゃない」
「え、爆竹好きな女の子おるんやな・・・」
「最高にクールだぜ」
「はい?」
「・・・って、麻純ちゃんが」
――会話をしてくれている!
何を言っているのか分からない素振りを見せれば、ギリギリ理解出来るくらいにちゃんと解説してくれている。これが葉木の言う「会話が出来る」状態なのか。思えば、初日は酷かった。完全に他人に対するそれだったと言って過言ではない。
「その子、清澄と性格合うとちゃうの?あいつもラッパー狂みたいなところあるて、さっき判明したし」
「それは駄目」
「何でか訊いてもええかな?」
「壱花ちゃんが悲しむ」
「ああ、せやんな!うんうん」
――これだ!これが会話しとるっちゅう事やんな!いっちゃん!
けれど爆竹を投げつけてきた清澄。お前だけは絶対に赦さない。