16.
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「何やってんだよ、繋げよ、手を!」
「しーっ!須藤くん、聞こえるから!!」
「というか、今の会話の流れで手ば繋ごうとする勇者はそうそうおらんやろね」
物陰から折竹達の動向を探っていた司、葉木、清澄の3名はなかなか進展しない現状に業を煮やしていた。なお、珠代と鹿目は今月の報告書を書く側に回っている。主に写真撮影とか。
「にしても、須藤くんがそんな熱心に友達の応援をするとは思わなかったよ」
「え?葉木さん、それは本気で言っているのかな?応援なんてこの俺がするはずないだろう?あんなに恋愛で手間取ってる聡なんてそうそう見られないからね。思い切り冷やかしておかないと」
「クズぅ・・・」
「何か言ったかな?」
司の笑顔はそれはそれは眩しかった。
懐中電灯の光を消した葉木は何も聞かなかった、見なかった事にしてポケットを漁る。そろそろ何らかのギミックを仕掛ける必要があるが、今日は何を持って来ていただろうか――
「あ。まずいなあ、ポケットに鈴しか入ってないや」
「その鈴、何に使うつもりやったと?」
「いや、スマフォに付けてた鈴が取れたから、ポケットに突っ込んでた・・・」
「そうなの?じゃあどうしようかな。俺も特に何も持っていないし、その辺にある割れ物でも投げて音を立てる?」
「あ!それなら私、得意だよ!」
「得意ってなんがね・・・」
かちっ、と清澄が懐中電灯を再び点ける。話がまとまらないと見て薄暗いのが嫌になったのは明白だ。しかし、彼は懐中電灯とは反対側の手にライターを持っていた。
途端、司が満面の笑みを浮かべる。彼はどこまでも楽しそうだった。
「ああ、それはいいね。火の玉演出でもするかい?」
「んにゃ。こっちのポケットには爆竹もあっとよ。聡がどのくらいで驚くか分からんかったけんね」
冗談だ、この時は誰もがそう思っていたが清澄は当然のように制服のポケットから1箱、爆竹を取り出した。おどろおどろしい模様が描かれている。
葉木が悲鳴のような反対声明を発した。
「あ、危ないよ・・・!花火系は止めておこう?この辺、水道通ってるか怪しいし」
「そうそう。音もうるさいからね」
「大丈夫、大丈夫。俺は爆竹の扱いには慣れとっけんね。上手い事足下に投げてみせるけん、応援しとって」
「足下!?というか、爆竹の扱いに慣れてるとか意味分からないんだけど!」
悪い笑顔を浮かべた清澄は爆竹を1房取り出すと直接その導火線をライターの火で炙った。言うまでもない事だが、爆竹に限らず花火に直接ライターで火を着けるのは大変危険な行為だ。
葉木どころか司の顔まで青ざめた。両者が慌てて両手で両耳を押さえる。
音が鳴る、そう思われた瞬間に清澄は手に持っていた爆竹を宙に放った。それは小さな炎を撒き散らしながら、少しずつ進んで行く折竹の背へと迫る。
清澄が狙った足下に着くより少しだけ早く、爆竹が音を立てて爆ぜた。凄まじい音が廃墟内に反響する。その中、清澄だけがひどく満足そうな顔をしていた。ソウ・クレイジー。