Ep4

15.


「じゃあ、頑張らんねよ、1番組」

 清澄の言葉で我に返る。そうだ、1番最初にスタートする為、自分達が引くくじは必ず1になるようになっていたのだった。見送る心研部一同の生温い目。手慣れている感あったし、別の生徒にも手を貸した事があるのだろう。

「じゃ・・・じゃあ、行こか。瀬戸さん」
「壱花ちゃん・・・」
「はよ終わったらまた会えるで。ここで永遠にお別れってわけじゃないんやから」

 一先ずは納得したのか、先頭切って歩き出す瀬戸。本当に怖さは微塵も感じていないようで、足取りに迷いは無い。
 壊れた自動ドアを引き、中に入る。

「うわぁ・・・廃墟てこうなっとるんやなあ。今まで行ったこと無かったけど、思ってたやつの3倍くらい禍々しいわ・・・」
「天然物だから」
「せやんなぁ。所詮、お化け屋敷みたいにセッティングされてるやつじゃ、この質感は再現できんのやな」

 散らかり方に不自然がない、と言えばそれが一番近いだろう。物理法則そのまま、危ない物は片付けられているが剥がれた壁なんかは本当に恐ろしい。この隙間から誰か覗いていたっておかしくない空気感がある。
 心研部、意外とまともな部活なのかもしれない。これは肝試し感覚で入ったら怖がりは本当に肝を抜かれてしまいかねないだろう。見事に心臓強そうな面子だったし当然と言えば当然か。
 妙な事を考えつつ、ぐんぐん進んで行く瀬戸の隣に並んだ。平均身長より少し小さいだろうか。折竹も清澄には及ばないがそこそこ高身長なので随分と小さく見える。

「瀬戸さん、危ないからあまり急いだらあかんで」
「うん」
「何も無いとは言い切れんし・・・な・・・」

 ――あれ。そういえば、驚かすからとは言われたが、どのポイントでどのようなギミックを仕掛けるかまで説明されていない。
 2歩、3歩と先に進んだ瀬戸が怪訝そうに振り返る。一緒に行こうと言ったのに折竹が立ち止まるので何をやっているのかと思ったのだろう。
 ――あかん、これあかんわ。今でさえ若干怖いのに、今日は司も清澄もおるやんけ!何して来るか分からん2人に加え、瀬戸さんまでビビリだしたら収拾つかんくなるんとちゃう!?

「顔青いよ?」
「・・・ちょっと要らん事思い出してもうたわ・・・」
「そう」

 いやいや、そうだ。こうしている場合じゃない。折角余所の部活にまで協力してもらったのだ。このチャンスを逃す手は無い。
 無理矢理平静を装った折竹は昔いたカノジョ達にそうしたように、瀬戸へこう声を掛けた。

「足下も危ないし怖いから手とか繋いでみる?」
「は?」
「冷たっ!吃驚したわ!何今のボケ殺しリアクション!一言の破壊力凄まじいわ!」
「・・・壊れたラジカセみたい、折竹くん」
「煩いって言うてんの!?煩いって!」

 拒否されたようなので素直に自重した。というか、この会話から何らかの希望を見出す事はほぼほぼ不可能だった。