Ep4

14.


 何事か逡巡した彼女はややあってもう諦めたのか、開閉していた唇を静かに閉じた。当然、何か音が発せられる事は無い。ああ、ミスった。
 心中で再びお弁当事件を思い出しながら涙しつつ、折竹もくじを引く。1番だ。というか、このくじには仕掛けがしてあるらしい。必ず自分と瀬戸が同じ番号を引ける、仕掛けが。葉木と清澄曰く、「くじ引き箱に仕掛けをするスキルだけが上がっていく」という事らしい。今までどれだけ細工くじ作ったんだろう。フェアもくそもあったもんじゃない。

「瀬戸さん何番やったん?俺、1番・・・あ」
「1番」
「あ、ああ・・・一番に引ける言うてたんやなくて、引いた番号が1やったんやな・・・。という事は、俺等一緒の番号やし、ゲスト同士で固まってもうたわ・・・はは・・・」

 瀬戸は自分の持っている番号札と折竹が持っているそれを見比べ、腑に落ちない顔をしている。くじに細工していた事、バレているのでは。考案者である葉木に助けを求めると、彼女は何かを悟ったような顔で親指を立てた。あれ、凄く不安なんだけど本当に伝わった?

「じゃあ、私達も恒例くじ引こうか」
「ふふ、何が出るかなあ・・・」

 司の笑顔に哀愁が漂っている気がした。そりゃそうだ、細工くじなぞ引きたい者はそうそういないだろう。
 しかし、葉木が上手い事話を逸らしてくれたおかげで瀬戸の視線はそちらを――というか、明らかに葉木を見ている。友人のくじの行く末が気になって仕方無いようだった。

「私は・・・ああ、壱花と同じ組み分けになったのね」
「良かったじゃないか、仙波さん。3番は2枚しか入っていないからね。いやあ、友達同士、楽しそうで何より」
「須藤くん。分かってはいると思うけれど・・・」
「ふふ、大丈夫だよ。ちゃんと今日の活動の趣旨は理解しているから」

 そう言った司は氷点下の笑みを浮かべている。怒っていると言うより、今から何をしでかしてやろうか企む顔だ。見ているこっちの正気をガリガリ削ってくるスタイル。

「壱花ちゃん・・・」
「お、俺がおるで!瀬戸さん」

 友達と離れてあからさまに寂しそうである。ここまでアウトオブ眼中扱いされると自意識過剰は抜きにしたって落ち込むものではないだろうか。いや、視界に入れられて懐いてこられても、それはそれで不気味だが。

「瀬戸さんは、お化け屋敷とか苦手なん?俺もものによっては怖がったりするんやけど」
「楽しい」
「楽しい!?お、おう・・・心臓に毛でも生えてんのかな・・・?」

 これは――瀬戸を怖がらせるのってかなり難航するのでは?
 そもそも、葉木はその事実に気付かなかったのだろうか。それとも、知った上で提案した?不安になってきた。