Ep4

13.


 ***

 最後に来たのは葉木と瀬戸のコンビだった。宣言通り、ちゃんと瀬戸を連れて来てはいるが彼女はぼんやりしていて、とてもじゃないが正常な意志に従ってやって来たものだとは思えない。

「壱花の遅刻は珍しいわね」

 仙波がチラチラと瀬戸に視線を送っている。物珍しげに割り込んで来たのは須藤司だった。

「へぇ。俺、クラスは4組固定だから余所のクラスがそうなってるなんて全然知らなかったよ」
「お前も口が減らんなぁ、司。最近もっと性格悪くなったんとちゃう?」
「清澄ほどじゃないよ」
「何でそこで俺が出てくるとさ・・・」

 事故に巻き込まれたような顔をする清澄は、あまりテンションが高く無い。さすが気分屋、放課後まで常に平坦な気分でいるはずがないというある種の安心には舌を巻きざるをえない。
 今から何かお出掛けするぞ、みたいな空気だったが、それは鹿目の「準備が出来た」という謎の宣言によって唐突に終わりを迎えた。

「今回の活動は肝試し、という事になっている。まずは組み分けを決めなければならない」
「わぁ、さすが鹿目くん。しっかりくじ用意してるじゃん!」
「・・・こういった物を用意するのはいつも俺の気がしてならないんだが?」
「いつもありがとう、鹿目くん」

 葉木と仙波による華麗な連係プレー。しかし、慣れているのかはたまたこういう性格なのか、鹿目は溜息を吐いただけだった。

「さぁ、桜ちゃん、折竹くん、くじを引いてね」
「え?俺等から引いてええの?」
「基本的にはゲストから引くのがルールだ。まあ、たまに順番が前後する事があるが・・・誰のせいとは言わないがね」

 鹿目の視線は明らかに清澄に向けられている。ふ、と何故か清澄は不敵な笑みを浮かべた。

「くじ引きの順番なんてどうでもよかやろ。気持ちの問題さ。細かい事に拘るとね?」
「清澄・・・余所様の部活に迷惑掛けたらあかんって・・・」
「余所の部活じゃなかやん。俺も所属しとるとに、おかしな事ば言うね」
「ああ、せやった。清澄と司はここの部と兼部しとるんやったな」

 もう男共はどうでもいい。今から如何にして瀬戸桜との心とか物理的な距離を埋めるのかが問題だし、勝負だ。

「瀬戸さん、先に引いてええで」
「・・・1番」
「せやせや、一番に引いてええから!」

 瀬戸の様子を伺うと微かに怪訝そうな顔をしていた。具体的に言うと『コイツ何を言ってるんだ』、と言わんばかりの顔である。あれ、何か変な事を言っただろうか。