Ep4

05.


「それにしても恋、恋・・・か。うん!何だか楽しくなってきた。それで、何を訊きたいのかな?」

 それまでローテンションだった葉木はそう言うと目を輝かせた。そう、普通に会話出来るが故に忘れがちだが、彼女もまた校内にその名を轟かせる四天王の一員。機嫌は基本的に平坦であるにも関わらず、ブレる時はブレる。そのブレ幅は常人には理解できないものだろう。
 何とか持ち直したのを確認しつつ、まずは一投。

「なぁ、瀬戸さんとはどうやって会話したらええの?いや、会話っちゅうコミュニケーションツールが使えんねん。何言っとるか分からんかもしれんけど」
「え。それを説明しだしたら昼休みどころか5時間目も終わっちゃうけどいいかな?」
「長いわ!じゃ、じゃあ明日。明日の昼休みに聞いてもええか?」

 いいよ、と頷いた葉木。続いて美鳥がこう問い掛けた。

「瀬戸さんて、壱花以外に友達いてへんの?」
「いるよ。でも、たぶん、私に聞く方が他の誰かに聞くより安全だけど」
「何それ恐っ!」

 美鳥と葉木の会話を聞いていて、気付いた事がある。どことなく、葉木から警戒されているようなそんな気がするのだ。緊張感があるとでも形容すればいいだろうか。あまり感じた事のないような一種異様な空気。ああもしかして、瀬戸桜の話題は彼女にとっての数少ない地雷だったのでは。
 昼休み終了5分前を告げる予鈴が鳴る。それを聞いた葉木は足早に自分の机へと帰っていった。折竹は隣の席である美鳥にさっき気付いた事を話してみる。

「あー、確かに壱花の表情、ちょっと固かったわ」
「これ明日、大丈夫なん?嫌なら話さんでええ、言うてた方がよくない?」
「そんな事言うてたら、あんた何も進展せんで?あたしに任しとき。とっておきの秘策用意したるわ」

 ――悪い顔で笑うなぁ・・・。
 美鳥とは腐れ縁。もうこの顔を見るだけで悪巧みしているのが手に取るように分かってしまい、折竹は盛大な溜息を吐いた。
 それと同時に5分経ったからか教師が教室へ入ってくる。予鈴なぞ飾りだと思っている数名の生徒がそそくさと席へ戻って行った。ちら、と葉木の様子を伺うと普段は弄らないスマートフォンを無心で叩いている。ああ、やっぱり地雷だったのかも。