Ep3

01.


 学校に早めに着いた私は教室にも寄らず、一番に例の専用部屋を訪れた。朝日が眩しい。禄に戸締まりしていないカーテンもし忘れている窓からは朝日が入り込んで私の部屋を照らし出している。
 うん、今はそれはいい。それどころじゃない。
 最近忙しくておざなりにしがちだったが、そろそろコンクールの〆切。描いた絵を顧問に提出しなければならなかったような気がする――
 ふと、部屋に違和感を覚えた。1日一度は訪れるこの部屋。何かが変わっているような気がする。

「げっ・・・!?」

 カエルが潰れたような声が出た。変化を見つけるのは実に簡単だ。
 黒板。まったく使われていないのでチョークすら置いていない黒板に白い大きな文字でこう書かれていたのだ。
 曰く――『コンクールの〆切、明後日だよ』、と。その横には小さな文字で顧問の名前が書かれている。なかなか捕まらない私を見かねて、わざわざ伝えに来てくれたのだろう。それはいいが、驚愕の事実の前では先生の善行も霞んでよく見えない。
 ゆっくり、身体ごと動かして描きかけの絵に視線を移す。
 所々色が塗られたそれはしかし、ほぼ真っ白。いや、土台は出来ているのだからあとは色を着けるだけなのだが、ここからが時間の掛かる場面ではないか。
 これは駄目だ。間に合わない。今日一日丸々使って4分の3を終わらせ、明日の放課後で仕上げるしかない。ごめん色んな教科の先生。ホームルームしか出るつもりはない!
 それに先生方が私を捜しに来る事は無いだろう。世の中そんなもんだ。

 ***

 作業を延々と続けていれば、気付けば夕暮れだった。入って来る夕日で現在の時刻が午後5時過ぎである事を悟る。外の部活生が白熱した声を上げているので、もう今日の活動も中盤といったところなのだろう。
 ぐぐっ、と背伸びをして鞄から弁当を取り出す。昼食を摂るのさえ忘れていたが、少し余裕も出て来たし手を着けず親にこれを返す気にもならないのでここらでご飯を食べよう、そうしよう。それにしたって昼にしては随分と遅い時間だが。
 おにぎりを頬張りながら、ふと廃棄するからと先生に貰った窓ガラスを発見した。ご丁寧に窓枠は外されている。私がガラスを好む事を知っていたから譲ってくれたんだと思う。