Ep2

04.


 部室を後にし、廊下へ出たところで須藤先輩と出会した。彼は何やら白い布のようなものを手に持っている。

「あ、ちわーっす。何やってんすか、先輩」
「やぁ、芳垣。部室に何か忘れ物でもしたのかい?ちなみに俺は陸部の方の部室にゼッケンを返しに来たんだ。ほら、先週大会だっただろ、俺達」
「いや知りませんけど・・・」
「さっきまで大会の反省会をしていてね。俺はミーティングとかしなくていいと思っているんだけど、聡・・・部長がどうしてもって言うから」

 何故か丁寧に事情を説明した須藤先輩は「それで」、とにこやかそうに見える顔から表情を消した。ああ、これはあまり機嫌がよろしくなかったのかもしれない。

「俺を呼び止めたって事は何か用事があったんじゃないのかな?」

 これで何もありませんでした、なんて言えば極刑は必至。もうどうせだから月原先輩にも訊いた事を訊いてみよう。碌な返事じゃないだろうがこのまま退散するわけにもいかない。

「あーっと、先輩は俺の事、可愛い系だと思ってますよね」
「正気かな?可愛いって何を基準に言っているのか分からないけれど、俺の方がお前よりキュートだよね?」
「いや知りませんけど!?」

 そもそも、と先輩は首を横に振った。

「性別が男の時点で可愛いもクソも無いよ。ああ、折角後輩から呼び止められたから何かと思えばこんな下らない事を訊かれて・・・」
「先輩らってアホな話題を振るの極端に嫌がりますよね!?クラスの女子とかは乗ってくれるのに!!」
「芳垣。社交辞令、って言葉。知ってるかい?」
「酷いッ!!」
「それに、後輩は苛めたくなってしまうものだからね。可愛いとは思えないな」
「ヒエッ!?」

 ――ヤバイ、心研部において俺、格好の標的だ・・・!
 何故なら2年は2人しかおらず、もう一人は兼山由衣。女子生徒である。だとしたら比較的弄りやすい方を弄るだろう。

「ああっと、そろそろ俺、帰るっす!」
「ふふ、兼山さんにもよろしく言っておいてね」

 前 言 撤 回 !!
 コイツ完全に兼山も標的にしてやがる・・・!!
 もうなんか要らない体力がゴリゴリ削られた気がするので購買にでも行って菓子でも買おう、そうしよう。