Ep2

01.


 朝日が眩しい。今日も1日良い天気になりそうだ、爽やかな朝。
 ――俺以外は。
 汗臭い部室で溜息を吐く。他の部はどうなのか知らないが、サッカー部の朝練は普通の放課後練習のように全力である。お陰様で1時間目が始まる前から汗だく。しかもどうしたって男の割合が多いので部室は全体的に散らかっている。中には几帳面に片付ける部員もいるがそれは少数派だ。

「お前朝から鬱陶しい溜息吐くなよ」

 テンションの低い声。ロッカーが隣である比江嶋千彰だ。低血圧にも関わらず2年でレギュラーに選ばれたばかりに朝練をサボる事も出来ない彼は今日も今日とて死んだ目をしている。一度目付きが悪いと注意したが元からの顔だと余計に恐い顔をされたので早々に諦めた。
 ともあれ、そんな千彰の不機嫌さなど知ったこっちゃないので、聞いていない事を承知で話を続ける。彼と上手くやっていくコツは多少強引に話をする事だ。

「いやさ、最近の俺の立ち位置について悩んでんだよ」
「あ?部活の事なら俺じゃなくて部長にでも聞け。何で同学年にアドバイス求めるんだよ、お門違いだろ」
「冷たっ!しかも、あんまサッカーは関係無い事なんだけど!」
「はあ?何で俺に聞くわけ?」
「今お前、サッカー以外の事なら聞くぜ、みたいな空気だったじゃん!それ言ったら何一つ話し掛けられないんですけどォ!」
「良いから用事があるなら早く話せ」
「理不尽!」

 息を整える。奴が冷たいのは今に始まった事じゃ無いし、それを気にしていたら精神的に病む。ホント。それで何人か辞めたし。ただ、陸上部程じゃないにしろサッカー部も結構人気な運動部なので部員がいなくなる事態にはならないが。恐らく陸上部との差は女子がいるかいないかだろう。
 まあともあれ、今はサッカーの事はいい。朝練で散々考えたし、終わった後も部活漬けなんて正直シンドイ。

「いやさ、俺って部のマスコットみたいな感じじゃん?」
「は?正気かよ芳垣」
「・・・そういうガチな反応は心抉れるから止めてくれる?」
「興味失せた。もう二度とそんな馬鹿な話持ち掛けてくるなよ」

 それを皮切りにバタン、とロッカーを閉めた千彰はスタスタと部室を去って行った。ただし、部室を戸締まりしなければならない部長の雄崎恭平には頭を下げて行くあたり世渡り上手である。