Ep1

11.


 月原くんが何かしら須藤くんに言うと思ったが、部長は寛容にその提案を受け入れた。いや絶対におかしいって、そんな広くないもんここ。
 しかし結構シビアな面がある心研部では多数決はほぼ絶対の決定権を持つ。およそ2名程1人1票制ではない、別次元の人間はいるが別れて探索するのに反対したのは私だけだ。そして1人1票制の凡人である私一人が駄々を捏ねたところで決定が覆るはずもない。

「じゃあ、はい、頑張ってね葉木さん。俺達は適度に応援しているから」
「え」

 にっこり、どこか薄ら寒さを伴う微笑みと共に右手を持ち上げられる。そんな須藤くんは反対の手に清澄くんの左手を持ち上げていた。それがそのままスライドされ、私の手と清澄くんの手が重なる。

「ちゃんと協力しないと駄目だよ。一方を置いて来たりしたら・・・ふふ、どうしようかな」
「司?お前これ部活動――」
「じゃあ、俺達はあっちから見て行くから。そっちは頼んだよ」
「いやちょ、須藤くん!?人数配分おかしいおかしい!!」

 凄まじい速度で珠代ちゃん達の所へ戻って行った須藤くんはそれから一度もこちらを振り返らなかった。ああそうか、また例の親切心、私からすれば『ありがた迷惑』に分類されるあれか。
 同じ扱いを受けたはずの清澄くんは一瞬ボーッと須藤くんを見送ったものの、次の瞬間にはふわふわと笑った。良く言えば妖精みたいな、悪く言えば頭のネジが飛んでいるとしか思えない笑みに頭の奥が痛くなる。清澄くんと2人きりと言えば美味しいシチュエーションだが、部活本来の目的は心霊研究だ。こんな恋のキューピット大作戦を決行している場合ではないのではないだろうか。
 きゅっ、と唖然としている間に重ねられた手を握られて我に返る。にこにこと笑う清澄くんは楽しげだが、彼はひょんな事から何てこと無い廃墟を怖がり出すタイプ。油断は禁物だろう。

「何かよう分からんけど、俺達も面白いもんでも探してみる?」
「面白いものって、例えば?あ!やっぱりいい!セルフ連想恐怖妄想壁あるもんね、清澄くん!」
「葉木ちゃんはあれやね。ちょいちょい俺の事ディスってくるよね」

 まったく馬鹿にしているつもりは無いのだが口から言葉がボロボロ出てしまうのは仕方無い。そして溢れた言葉がどうしようもないのも仕方無いと思う。
 まあいい、清澄くんと喋るのは楽しいし、そうそうある機会でもないし、珠代ちゃん達には感謝しておこう。悲しいかな、運動部男子と文化部女子はいまいち気が合わない場合が多い。人間性がすでに違うからかもしれない。もっと私達が歳を取って、大学生や社会人になってくれば変わるのかもしれないが、とにかく中高ではこの差は致命的だと、誰かが言っていた気がする。

「葉木ちゃん?まずはどこ行こうか」

 するり、手が離れる。当然その手を追い掛ける度胸は無いので気付かないふりをして目に付いた部屋を指さした。拘りなんて特には無くて、ただただ目に付いたから。会話の繋ぎに。

「あの部屋とか何かあるかもしれない!」
「待合室やね。あーっと、あれ、インフルエンザとかの子供を隔離する部屋やん」
「仕方無いね、インフルはマジで感染力高いし」
「ふふ、俺が小学生やった頃に一度だけ町内放送でインフルエンザに注意しろー、っち言われたなぁ」
「町内放送で!?大事件じゃん・・・!」
「小学校、中学校は全部学校閉鎖になったとさ。で、町長さん激おこ」
「町長さんが無事だった、っていうのが一番笑えるポイントかな」
「ふぅん。葉木ちゃんの笑いの壺ってだいぶズレとるね」

 お 前 に 言 わ れ た く な い !!
 駄目だ私、落ち着け私。テメェ平気で部活サボるような奴に感性云々言われたくないわ、とか言ったら色々アウトだ、頑張れ私。