Ep1

08.


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 今日は1日が凄く充実していた。
 風呂上がり、髪も乾かさずベッドにダイブしてスマートフォンを握りしめる。すでに日は落ちている午後9時半。夕飯も当然終えている時間帯だ。
 LINEの緑色のアイコンをタップ、一番上にある美鳥ちゃんの名前をタップして画面を呼び出す。今日は色々あったので経過を美鳥ちゃんに報告しないと気が済まない。人の恋愛事情なんて知ったこっちゃない、と切り捨てたりしないところが美鳥ちゃんの良い所なんだと思う。

『聞いて、美鳥ちゃん!今日は清澄くんと一緒に帰ったし、土曜日は久しぶりの部活だよ!』

 いつもこの時間に報告会をするからか、すぐに既読マークが付いた。といっても、美鳥ちゃんもスマフォをよく弄る方なので何かゲームでもしていたのかもしれないが。

『良かったやん。壱花の家、割と入り組んだ所にあるしな。明日も送ってもらい』

 何故だろう、何か違和感のある文。気のせいだとは思うのだけれど、美鳥ちゃんと喋ったりLINEしたりしていると、ふとこんな違和感に襲われる事がある。美鳥ちゃんは隠し事とか嘘が吐けないタイプだ。裏表の無い子だからこそ、どうしてだか違和感があるような気がする。
 が、話を聞いて貰っている事を思いだし、取り敢えず近況報告の続きを打つ。自分から話を振っておいてその後スルーとかクズ過ぎる。

『それでね、土曜日の部活で2人きりになる方法を今考えてるんだけど』
『何や、いつも上手くやってるやろ?何でいきなり』
『今回は参加者多いんだよ』

 一瞬だけ途切れる。何か考えてくれてる事が分かってふふふ、と私は一人不気味に微笑んだ。正直、何か良い方法を考えてくれているという事実の方が嬉しいものだ。根本的に解決しはしなくても、一緒に考えている感じがするこの瞬間が好き。
 ややあって、帰って来たのはある意味一番確実な方法だった。

『ずっとくっついとくしかないやろな。あいつ集団こうどうでけへんし、そのうち群れからはぐれるやろ。あんたがずっとついとったら見失う事ないし』
『そ・れ・だ!』
『せやろせやろ!あたしは天才やからな、うん。ま、なるようにしかならへん』

 でも、と表示される。何だと言うんだ美鳥ちゃん。

『壱花、上鶴と2人きり心霊スポット大丈夫なん?あいつ、割とビビリやで』
『ああ、私は何か起きない限り怖がったりしないから大丈夫だよ』

 そう。私は割とホラー系に対してシビアな目を持っているのだと思う。具体的に言うといきなり怖がりだす珠代ちゃんを見てああ可愛いなあ、と思えるくらいの余裕はある。ので、清澄くんがいきなり怖がりだしたって特に何とも思わないだろう。

『ならええねん。土曜日、上手く行くとええな』
『うん、ありがとう』

 そのやり取りを皮切りに、スマフォを充電器に繋いだ。さて、あとの時間は漫画読むなり何なりして過ごすとしよう。