04.
はいはい、と再度手を叩いた部長に視線が集まる。そろそろ本題に入らないか、とみんな心の中では待っていたようでやっと部室内が静かになった。
「もういい加減話を始めるからね。もう、昼休み終わっちゃうでしょ・・・で、次の探索場所なんだけど。もうすでに目処立ててるんだよ」
「おおーっ!面白そーっすね!俺、前回参加できなかったし!」
「ああ、そういえば芳垣くんは練習試合の前日で不参加だったっけ?」
「まあ俺はー、全然ヨユーで参加出来ると思ってたんすけど、恭平先輩が止めとけって言うから・・・」
当然ね、私も許可しないわ。と珠代ちゃんが頷く。
脱線した話を戻すべく、月原くんは敢えて会話の流れを無視して淡々と用件を述べ始めた。割と気の長い方だけれど自分だけ弁当が食べられないという状況が嫌だったに違い無い。
「それで、どこ行くと?陸部も多分参加できるやろ。特に近い試合とかも無いけん」
「それはいいね。ま、今回は近場だよ。美東市にある病院の廃墟だからね」
美東市と言えば隣街なので、電車に乗って20分くらいの所だ。今までは県外に行ったりした事もあったので近いっちゃ近い場所だろう。なお、徒歩圏内にあるそういった類の場所は行き尽くしてしまっている。
特に反対意見が上がる事も無く、じゃあ、と月原くんが伸びをした。
「今週の土曜日か来週にしようと思うんだ。日程は決まり次第連絡するから、ちゃんとLINEチェックしておいてね。特に上鶴くん」
「うん?俺?」
「だって君、たまに既読すら付けないでしょ」
「あっはっは。それもそうやんね。でも葉木ちゃんが毎回俺に教えてくれるから、あんま確認せんくてもよかとさ」
「葉木さんは上鶴くんの介護でもしているのかな?」
部長に睨まれた。甘やかすなと言わんばかりである。
「話終わったと?なら、俺も一応運動上に顔出しとくわ。後で文句言われるのも面倒やし」
「え?部活出ないなら私も一緒に行くよ!」
「・・・?え?何で?」
あ、首傾げてるの可愛いなぁ。
そんな事を考えながら大きな背中を追い掛けた。部室に残った連中の事は知らん。ごめんね珠代ちゃん!