02.
心霊研究部、略して心研部なんて呼ばれているうちの部活の活動内容は想像通りだ。オカルト研究部と言っても過言ではないだろう。近場の心霊スポットなんかに行って肝試ししたり、学校の七不思議を調査したりと本当に遊び系文化部なのだ。
なお、ガチ心霊体験は3度程経験した。高校生の頭脳如きではそれが何だったのか分からないので便宜上、心霊体験という事にしている。真相は不明だ。
心研部と言えば兼部率が高く、メインは運動部をやっているが片手間に兼部をしたいアグレッシブな人材に溢れていると言えるだろう。かく言う私もメインは美術部である。が、当然の事ながら部長系はいない。そう言えば副部長が一人いるが、彼女は忙しくないのだろうか。
「失礼しまーす」
返事を聞かずドアを開ける。部員分の椅子と白板、後は適当なロッカーしかないそこは教室という程の広さはなく、ミーティングルームくらいのサイズだ。
「遅かったわね。授業が長引いたのかしら?」
「3-6は4限目数学・・・少しだけ終わりが長引いたんじゃないのかな」
早く座りなさい、と女子弓道部副部長・仙波珠代に言われるまま定位置に座った。流れる滑らかな長髪を一つに束ねた彼女の姿勢はとても良い。淑やかな動作に見取れていると心研部の部長である月原和幸が手を叩いた。
「3人か・・・そこそこ集まっているね。まあ、僕しかいなくても勝手に計画は立てるけれど」
じゃあ何で呼んだ。思ったが言わなかった。きっと独りじゃ寂しかったんだよ、うん。
次のフィールドワークなんだけれどね、と少しだけ楽しげに言葉を弾ませた部長の言葉を遮るように部室のドアが開け放たれた。
「うわー、遅れてスンマセン!あ、もう次の予定立てちゃいました!?」
入って来たのは1つ下、サッカー部にも所属している自称愛され系の後輩らしい芳垣光だ。肩で息をするサッカー部は走って一番前の指定席に着いた。月原くんが穏やかな笑みを浮かべる。
「いいや。まだ何の話もしていないよ、間に合って良かったね」
「うぃーっす。あーあ、なんでこっちの部は部員揃ってねぇのに勝手に決めて勝手に部活しちゃうかなぁ・・・」
「仕方無いさ。だって君達、運動部の方を優先するだろ?」
正論。ぐうの音も出ない運動部達は押し黙った。そう、心研部にはたった一つのルールがある。
――全員揃っていなくても、月1で何かしらの活動をする事。
理由は単純だ。部を存続させるにあたって、活動証明の書類を出さなければならないが、それは活動をしなければ出せないからだ。2ヶ月に一度提出するそれの為、部の存続の為に全員一緒になんて甘っちょろい事は言っていられない。
「さすがにもう来ないかな。昼練の子達を待つわけにもいかないからねぇ。よーし始めよ――」
ガチャリ、と軽い音を立てて再び部室のドアノブが軽く回った。今日は遅刻参加者が多いなぁ、と月原くんはやっぱり笑っている。