15:それが合図
数が多い。
近頃よく相手にする通称、晶獣。無機物じみた手応えのない敵なのだが今日はその数が異常に多い。単発で送っても相手にならないと悟ったのか物量戦に出たようだ。それでもやはり弱いものは弱いので結果として面倒事が増えただけなのだが。
溜息を吐いたギルバードは右端から伸びて来た太い獣のような腕に手刀を叩き降ろす。硬い手応えと共に輝く結晶が大気中に散った。
「・・・他の連中はどこへ行った?」
ほとんどお祭り騒ぎ、デカイ図体、周囲の広さなどお構いなく出現した晶獣のせいでレックスとドルチェを見失った。何か起きるとは思わないがバラバラに本拠へ帰ると入れ違いになるかもしれないし、帰る前に集合したいところだ。
鼻を使って捜すのは容易だが、あの2人にメンバーと再会しようという考えは無いだろう。別々の方角へ行かれると合流が困難だ。であれば一番最初に今の持ち場を片付け、奴等が帰ろうとする前に引き摺ってでも合流するのが吉。つまりここで油を売っている暇は無い。
離れている一体に詰め寄る。目に見える範囲だけでも速く片付けてしまうとしよう。こんなの一体でも逃がせば大問題になる。
が、地を蹴った丁度そのタイミングで背後からドンッ、という腹に響くような破裂音が響いた。背後とは言っても相当離れているが。
思わず足を止め、振り返る。
空に大きな火の花が咲いていた。言うまでも無く打ち上げ花火。
「レックスか」
――まだ昼間だし、そもそも戦闘中に花火なんかするな。
諸々、言いたい事はたくさんあったが恐らくは集合場所はここです、という合図なのだろう。鵜呑みにして本部とは反対方向の集合場所(仮)に向かった挙げ句、誰もいなかったら怒ってもいいだろうか。