16:道徳なんて腹の足にもならない
『ああ、もしもし?少し救援をお願いしたいのだけれど今いいかな?』
「悪いが、今は手が空いていない。日が昇ってからにしてくれんか」
『・・・そう。それは残念だ』
無線を一方的に切ったレックスは大きく伸びをした。エリオット総督からの連絡である。
「――良いのか、行かなくて」
「うむ。お前は本当に耳が良いなあ。それに、午前3時だぞ。しかも野営ときている。わざわざ必要の無い救援へ行く必要などないさ」
いつからいたのか、木に背を預けたギルバードは苦笑していた。
任務の都合で真夜中の森林での野営を余儀なくされたが、連れてきた新入り達はすでに眠っている。それを無理矢理起こすつもりなど毛頭無いし、朝から働きづめ。いくら総督からの要請と言えど鵜呑みにする気は無い。
「上着はどうした?」
「うん?ああ、あれならカイルの奴に貸した」
「そうか。ま、何か言われる時は俺も一緒だ。始末書くらいなら作ってやってもいい」
はっ、とレックスは笑みを溢した。
「止めろ止めろ、お前にそう優しくされては明日の天気に差し支える!」
「はぁ・・・まあ、貴方が自分でキーボード叩いて始末書を作れるというのなら、これ以上は何も言わないが」
「あ!待て待て、うそうそ!始末書は俺に代わりに作ってくれ!」
はぁ、ギルバードが盛大に溜息を吐いた。